2023 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of high-energy nuclear collisions based on core-corona picture and transport properties of QGP
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23K03395
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
平野 哲文 上智大学, 理工学部, 教授 (40318803)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 高エネルギー原子核衝突反応 / コアーコロナ描像 / 相対論的流体力学 / 相対論的因果律 / クォークグルーオンプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
高エネルギー原子核衝突反応を統合的に記述するために「コアーコロナ描像」に基づく動的模型の構築、特に、バリオン密度依存性と散逸の効果を既存の模型に組み込み、実際に生成された高温高密度核物質がどの程度の範囲で局所熱平衡に達しているか、さらにはこの最先端の模型を用いてずれ粘性、体粘性、バリオン拡散係数といったクォークグルーオンプラズマの輸送特性を引き出すことを目的としている。 今年度は特に保存バリオン数の流れを模型に組み込むべく、まずはバリオン数密度依存性を含む状態方程式の構築とバリオン数の動的初期化の検討を行った。動的にコアーコロナ描像に基づく初期化を行うと、例えば反クォークの自由度が局所平衡に達成して流体成分になる場合には、小さいながらも負のバリオン数を持ったQCD物質が作られる可能性がある。このような場合にも対応できるように既存の状態方程式を拡張した。動的初期化については、バリオン数に対しては時々刻々エネルギーや運動量を系に供給しつつ、自身のエネルギーが媒質の温度程度になった時点で系にバリオン数を落とすように模型化した。 また、相対論的流体方程式の因果律の観点から衝突直後、および、系のエネルギー密度が小さい領域においては適用範囲を超えていることが指摘されている。この因果律の破れと系の非平衡度合いの関係を明らかにし、QCD物質として許されるレイノルズ数の制限を行った。この研究については現在、論文出版の準備中である。 QGP中を通過するパートンが媒質中のパートンを"蹴りだす"過程は、負の湧き出し項として記述可能であるがこれまで考慮されてこなかった。この過程としてまずはパートンカスケード模型に基づき、その過程の数値シミュレーションにおけるアルゴリズムの構築も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に述べたとおり、高横運動量の成分を取り込む動的初期化を行う過程については、まだ手探りな状況である。その一方で有限バリオン密度を考慮する部分についてを重要視したことで、この研究の新たな方向性も示している。それらを総合的に勘案すると全体として研究は概ね予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
高バリオン密度物質の状態方程式とそれに対応する動的初期化に基づく湧き出し項について、数値シミュレーションコードに実装し、特に有限バリオン密度の効果が大きく効いてくる前方ラピディティ領域の生成粒子比やバリオンストッピングの様相について研究を進める。 因果律の破れと非平衡度合いの関係について得られた結果を論文にまとめる。また、コアーコロナの描像の指標とすべく、因果律の破れの判定条件を数値シミュレーションコードに実装する。 負の湧き出し項に対しては、単純に扱うと物質の局所的なエネルギー密度が負になる非物理的な可能性を含むため、まずはテスト計算として一様背景中で負の湧き出し項を取り入れた場合の応答について研究を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として51,448円が発生したが予定の段階では未決定であった国際会議参加のための旅費や参加費によるもので、大きな問題ではないと考えられる。この次年度使用額を2024年度の国際会議出張の旅費や参加費に組み込むことで有効に活用することを予定している。
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