2023 Fiscal Year Research-status Report
高精度QCD計算のための理論的枠組の構築と現象論的応用
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23K03404
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
隅野 行成 東北大学, 理学研究科, 教授 (80260412)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リノーマロン / 摂動QCD / クォーコニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は3つのテーマに取り組んだ。 1つ目は、DSRS法を完成させ、Bメソンの崩壊幅の計算に適用して|Vcb|を決定した。結果をJHEP及びPhys.Rev.に発表した。 2つ目は、クォーコニウム系における高次リノーマロンの相殺について調べた。以前よりleading orderでO(Λ_QCD)のリノーマロン相殺が、クォークpole質量とQCDポテンシャルの間で起こっていることが知られており、そのことは基礎物理定数の精密決定において重要な役割を果たして来た。今回初めてO(Λ_QCD^2/m)のリノーマロン相殺が起こっている兆候を見つけた。以下の3つの解析を行った。(a)FTRS法、及びDSRS法のLeading log近似で、1/(mr^2)ポテンシャルにO(Λ_QCD^2/m)のリノーマロンが含まれることを示した。(b)Fixed-orderの摂動級数の解析で、この高次リノーマロン相殺を取り入れると、取り入れない場合よりも摂動級数の収束性が上がることを示した。(c)FTRS/DSRS法によるpole質量と1/(mr^2)ポテンシャルの各々のリノーマロンの収束性の評価は、現状の最初の2項では難しいことが分かった。一方で、それらの間には部分的な相殺が起こっていることが見て取れた。これらの結果は、両者にリノーマロンが含まれていて、かつそれらが相殺しているという予想と無矛盾であり、更に(a)(b)はその予想を強く示唆していると解釈できる。このような解析は高次リノーマロンについて初めてのものであり、この性質を用いて物理量の高精度測定に応用できることが期待される。この解析結果はPhysics Lettersに発表済みである。 3つ目は、クォーコニウム系のハミルトニアンに対する2ループ補正の計算である。順調に計算が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リノーマロン相殺とOPEを用いた基礎物理定数の高精度決定に向けて順調に成果を上げているため。
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Strategy for Future Research Activity |
クォーコニウム系のハミルトニアンに対する2ループ補正の計算を完成させる。またその結果を用いてクォーコニウム系の超微細構造に対する高次補正を計算する。既にハミルトニアンの計算の方針は確定して順調に計算は進んでいる。現在はnon-annihilation channelの計算を行なっているが、終了後にはannihilation channelの計算を行なう。同じ方針で計算できるはずである。 また、国際会議に参加して途中経過を発表するとともに、最近の計算技術の進展を習得して我々の計算に応用することを模索する。
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Causes of Carryover |
招へいを予定していた外国人研究者が都合により来れなくなったので、次年度に招へいする予定である。
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