2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K03405
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊敷 吾郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50710761)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 非可換幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論の非摂動的定式化を与えると期待されている行列模型の解析を行った。行列模型が弦理論の定式化を与えているかどうかを示すためには(1)行列模型の解析方法を確立すること(2)行列変数と弦理論の幾何学との間の関係を理解すること、の2点がまず重要となる。本研究の目標は、行列模型の新しい解析方法を確立することおよび、模型の幾何学的な理解を得ることであり、初年度となる本年度はまず[A]近年注目されているbootstrap法が、行列模型に適用可能か[B]行列模型が記述し得る幾何学的対象を拡張できるか、という二つの問題を考えた。[A]の研究では残念ながら否定的な結論を得た。本研究ではbootstap法と局所化という二つの方法を併用し、計算効率が向上するかどうかを調べたが、bootstrap法は一般のエネルギースケールの物理量を扱うのに対し、局所化は特定の対称性(超対称性)を保った比較的低いエネルギースケールの物理量を扱うものであるため、これら二つの方法は相性が悪く、併用する利点がないことが分かった。また、bootstrap法自体も、可解な模型については有用であるが、本研究で扱うような行列模型においては一般に計算効率が良くないことが分かった。一方、[B]の研究ではゲージ場やフェルミオン場といった素粒子物理学における重要な対象が、行列模型を用いて記述できることが理解できた。本研究では数学分野における量子化の手法を応用し、この理解を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bootstrap法についての研究では否定的な結果が出たが、想定の範囲である。一方で行列模型の幾何学についての研究では新しい物理的対象の記述法が理解できており、当初の計画以上に進展している。総合しておおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Bootstrap法については効率が非常に悪いことが分かったため、今後は別の解析方法を模索する。近年、Maldacenaらにより行列模型の指数の計算に基づいた散乱振幅の計算方法が提案されており、私の研究している行列模型にもこれが応用可能であるかどうかを調べる予定である。一方、幾何学の研究ではこれまでの方針どおり、さらに広い幾何学(弦の幾何学)が行列模型で記述できるかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
旅費や物品の購入が当初計画と異なっている。旅費については当初計画していた一部の研究成果が得られなかったことと、体調不良もあり、出張を見送ったことが理由である。一方で物品については購入予定だった物品の代替品で利用可能なものがあったため、そちらを用いた。当初予定していた物品の購入は来年度以降に行う予定である。
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