2023 Fiscal Year Research-status Report
原始重力波観測へ向けた前景放射除去のための統計データ解析法の開発
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23K03408
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西澤 篤志 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (90569378)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 重力波 / データ解析 / 前景放射 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の初年度は多数のコンパクト連星からの重力波が作る、前景放射の統計的性質について調べた。そのためにまず、これまでの重力波観測から分かっている現実的な連星合体率や連星までの距離分布、ブラックホールや中性子星の質量分布を考慮し、比較的計算が軽い、周波数領域において重力波信号を生成し、擬似観測データを生成した。この擬似観測データの統計的性質を調べることで、個別に除去可能な振幅の大きな信号と振幅が小さく個別には検出できない信号の混合比を見積もった。その結果、連星の個数 (ポワソン) ゆらぎ、すなわち、背景重力はの振幅ゆらぎが想定していたよりも大きいことが分かった。これはつまり、背景重力波の非等方性も想定よりも大きいことを意味する。本研究計画では、1年目に信号雑音比の大きな重力波信号の個別除去に焦点を当て研究を行い、2年目に非等方背景重力波としての統計的除去を行うことにしていたが、非等方背景重力波の除去が重要と考え、2年目の計画を先に行うことにした。非等方背景重力波を統計的除去に除去するためには背景重力波の非等方性を正確に見積もる必要がある。そこで、観測データの解析による非等方性の観測精度を推定するために、Fisher 行列による解析コードを開発し、非等方背景重力波の全天マップの多重極成分の測定誤差を見積もることが可能となった。これにより、実際の観測データに対して非等方背景重力波の除去を行った際の残留雑音を推定できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は多数のコンパクト連星からの重力波が作る前景放射の統計的性質について調べ、目標通り、個別に除去可能な振幅の大きな信号と振幅が小さく個別には検出できない信号の混合比やそれらの統計ゆらぎに関する成果を得ることができた。ここで得られた情報を元にして、1年目と2年目の研究計画を逆順に行うことにしたが、当初2年目として計画していた、非等方背景重力波の観測精度を見積もるための Fisher 行列による解析コードについてはおよそ開発が完了し、非等方背景重力波の全天マップの多重極成分の測定誤差を見積もることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初1年目として計画していた、信号雑音比の大きな重力波信号の個別除去に焦点を当て研究を2年目に行う。まず、必要な波形モデルの検討を行う。最も単純な波形モデル (円軌道、スピン歳差なし、周辺物質なし) をベースとして、より複雑な要素(連星の離心率、スピン歳差、多重極高次モードの寄与、環境効果 (降着円盤、暗黒物質ハロー、3体問題) ) がパラメータ推定誤差に与える影響について、個々の連星に対してフィッシャー情報量行列を用いた定量的な見積りを行う。以上の結果に計算コストの現実的な制約条件も考慮して差し引ける重力波信号の信号雑音比の下限を求める。一方で、非等方背景重力波の統計的除去に関しては、擬似観測データを生成し、より現実的なセットアップにおいて測定誤差の見積もりを行う。
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Causes of Carryover |
学内業務のために予定していた海外出張に行けなかったため。研究計画をより効率的に遂行するため、関係する研究を行っている海外の研究グループを訪問し、議論を行う。
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