2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K03446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森脇 可奈 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60962321)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 観測的宇宙論 / 銀河形成 / 宇宙再電離 / 宇宙大規模構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大きく分けて二つの研究成果が得られた。第一の研究では、今後の広領域銀河探査のターゲットとなる赤方偏移1から3におけるダークマターハローの性質と銀河の星形成率の関係について、それがパワースペクトルなどの統計量にどういった影響を与えるかを、宇宙論的流体シミュレーションを用いて調べた。星形成率を適切にモデリングすることは、将来得られる観測データから宇宙論的情報を引き出す際に重要となる。解析的に得られるハロー質量と星形成率の関係を用いた場合には、パワースペクトルに現れるスケール依存性を正確に捉えることができないことを明らかにした。これは、実際には短いタイムスケールでの星形成率の増減が完全にランダムで起こるのではなく、ハローの質量以外の性質がその増減に影響していることを示唆する。特に、輝線強度マッピングと呼ばれる観測手法を用いた場合に、解析的な星形成率モデルを用いて予測されるパワースペクトルと実際のパワースペクトルとの差が大きく見られた。 本年度はさらに、数値シミュレーションと解析的な銀河モデルを合わせることで、宇宙再電離期における銀河の模擬カタログを生成した。カタログは、さまざまな銀河モデルに対して生成した。これを用いて、将来のSKA望遠鏡などで観測される21cm線シグナルと銀河分布の相互パワースペクトルが赤方偏移とともにどのように変化するかを調べた。宇宙の温度・電離状態の変化に伴って相互パワースペクトルの符号が変化し、その転換が起きる赤方偏移が遠方銀河の性質を推定するにあたって重要なプローブとなることを明らかにした。また、転換赤方偏移の銀河モデルパラメータに対する依存性は小さいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、シミュレーションと機械学習を用いて銀河の性質を予言することを目的としている。本年度は、シミュレーションを用いた観測予言について大幅に進めることができた。さらに、この予言に基づいて、将来の観測データから銀河の性質を推定する方法についても研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、シミュレーションに加え、機械学習も組み合わせながら研究を進めていく。例えば、本年度の研究では、銀河の星形成率を適切に決めるためにはハロー質量以外のハローの性質も重要となる示唆が得られたが、どういったパラメータがどのように星形成率に関連しているかについて、機械学習の手法を適用して研究を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも必要とするシミュレーションデータのサイズが小さく、必要となるハードディスクの数が少なかった。次年度使用額は、機械学習における学習データを生成するために必要となるメモリの購入に充てる。
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