2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the origin of binary star parameters using high-resolution numerical simulations
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23K03464
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
松本 倫明 法政大学, 人間環境学部, 教授 (60308004)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 星形成 / 連星 / 数値シミュレーション / 磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
連星の周囲のガスの運動を数値シミュレーションで調べた。数値シミュレーションでは高解像度が必要になるため、適合格子細分化法を用いたコードSFUMATOを用いた。本モデルでは磁場の役割に注目し、磁場は初期に周連星円盤を縦に貫く形状を考えた。 シミュレーションの結果、磁場によって2種類のアウトフローが形成した。第1のアウトフローは各々の連星の周囲の円盤(星周円盤)から放出される2対の高速なアウトフローである。連星の公転運動によって、2対の高速なアウトフローは螺旋状にからまった構造を持つ。第2のアウトフローは連星を取り囲む円盤(周連星円盤)から放出される低速なアウトフローである。このアウトフローは大きな開口角を持ち、高速なアウトフローを取り囲むように放出される。 角運動量の輸送についても調べた。周連星円盤を含む連星の周囲では、連星の重力トルクによる角運動量輸送がもっとも大きな効果を持ち、星への質量降着に大きな影響を与える。一方、連星系から角運動量を抜き去るには磁場による効果が重要である。先述の2種類のアウトフローと磁気回転不安定性(MRI)による角運動量輸送が大きな役割を担う。これらの角運動量輸送により、連星の軌道進化において連星間距離が縮むことが予想される。以上の内容をまとめて論文に投稿した。 観測との比較研究も実施した。原始星系IRAS 04239+2436は三重星と考えられており、ALMA望遠鏡によってストリーマーと呼ばれる数100auの長さのガスの流れが観測された。この観測結果を説明するために、過去の数値シミュレーションを再解析し、さらに新しいシミュレーションも実施した。シミュレーションでは、フィラメント状分子雲から、分子雲コアを経て、三重星が形成された。その結果、IRAS 04239+2436のストリーマーは三重星とエンベロープの重力相互作用によって説明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁場を考慮した連星の周りのガスの運動について、高解像数値シミュレーションを用いて調べた。磁場の効果に着目し、各種アウトフローの形成を再現し、角運動量輸送における磁場の役割について調べた。その結果を論文として投稿し、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのモデルでは連星の軌道は円軌道に固定されていた。今後は、連星の軌道進化も考慮したシミュレーションを実施し、その結果を解析する。連星の軌道進化では、ガスと星との間の重力を考慮するが、ガスの自己重力は無視をする。この新しいモデルによって、磁場が角運動量を輸送して連星間距離が実際に縮まる様子が再現できると期待される。 また、このモデルの成果を、原始連星だけでなく、ブラックホール連星にも拡張する予定である。両者の連星における軌道進化の基本的な力学は共通しているので、本モデルを両者の連星に適用することができる。とくに超巨大ブラックホール連星が合体するときに放出される重力波が最近観測され注目されている。超巨大ブラックホール連星の合体には、連星軌道の進化が大きく影響する。したがって、本研究は超巨大ブラックホール連星の合体しくみの解明に向けて大きく貢献すると期待される。
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Causes of Carryover |
研究は順調に遂行しているが、学内の役職に就いたために国内外に出張する回数が大幅に制限されたため、旅費の執行額が減ったため。2024年度末に役職が終了するため、2025年度に国内外の出張を行って国内外との共同研究をさらに推進する予定である。
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