2023 Fiscal Year Research-status Report
波動粒子相互作用直接解析手法を用いた電磁サイクロトロン波動と粒子の相互作用の研究
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23K03476
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 成寿 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (80757162)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ホイッスラーモード波動 / 非線形波動粒子相互作用 / 波動粒子相互作用直接解析 / 無衝突衝撃波 / MMS衛星群 |
Outline of Annual Research Achievements |
MMS衛星編隊4機が衛星間距離を最も小さい状態(~7 km)で観測を行っていた2016年9月末から2017年1月末までの大量の電磁場と電子の観測データについてのデータ処理を進め、地球磁気圏外のシース領域、衝撃波近傍等におけるホイッスラーモード波動に対応して波動の非線形成長を示すことが期待される電子の特徴的な分布(サイクロトロン共鳴速度付近におけるジャイロ非等方)の検出を進めた。その結果、衝撃波やマグネトポーズ近傍など特性が異なる領域でも非線形成長の可能性が高い電子の分布を持つイベントを複数検出することができた。 まずは垂直衝撃波のごく近傍におけるイベントに着目し、波動粒子相互作用直接解析(WPIA)の手法を適用し、非線形成長を引き起こす理論的に予測された条件を満たしているか、複数衛星観測による磁場勾配の観測を生かして詳細な評価を行った。その結果、垂直衝撃波近傍でもホイッスラーモード波動の非線形成長が発生している事を直接的に実証することに成功した。さらに、極めて波動の成長率が高く伝搬するウェーブパケットの成長が1波長以内にまで近接した衛星間ですら検出できるという計画時の予想を超えた描像の観測に成功している事が分かった。加えて、WPIAの手法によって検出された共鳴電子から波動へのエネルギー輸送率に基づいて推定した成長率と、実際の振幅増加がほぼ整合するという解析結果が得られ、ごく最近実現された波動と粒子間のエネルギー輸送に加えて、伝搬する波動の成長まで含む波動成長の総合的観測の初の実現例となる。 本成果は、今までは内部磁気圏で注目されて広く研究されてきたホイッスラーモード波動の非線形成長が、衝撃波近傍という異なるプラズマ特性を持つ空間でも普遍的に重要であるどころか、むしろ極めて顕著に表れている事を示す大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MMS衛星編隊の2016年9月末から2017年1月末までの大量の電磁場と電子の観測データについてのデータ処理を進めることが当初の予定で、地球磁気圏外のシース領域、衝撃波近傍等におけるホイッスラーモード波動に対応して波動の非線形成長を示すことが期待される電子の特徴的な分布(サイクロトロン共鳴速度付近におけるジャイロ非等方)の検出が順調に行えた点は、極めて順調に進展していると言える。元々は、WPIAの手法を様々なプラズマ領域における観測データに適用してホイッスラーモード波動の非線形成長を観測的に実証することまでで十分な成果となると予定していたが、衛星間でのウェーブパケットの振幅増加が検出できるという予想を超えた観測事実のため、エネルギー輸送に基づいて成長率と衛星間での振幅比較の解析を追加的に行い、当初の予定より大きな研究の進展を得たが、初期成果の論文投稿が予定より遅れており、研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
MMS衛星の2016年9月末から2017年1月末までの観測データからピックアップしたホイッスラーモード波動と電子の非線形相互作用が期待されるイベントについて、垂直衝撃波におけるイベントについての初期結果の出版を最優先で目指し、次にピックアップされたリコネクション近傍、平行衝撃波近傍、フォアショック等より複雑な領域のイベントでの非線形成長の定量評価を進める。これにより、ホイッスラーモード波動の非線形成長の総合的な理解を大きく進展させる。 加えて、磁気圏内における電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波動とイオンの非線形相互作用についてもWPIAの手法を用いて解析を行う。これらの解析の際、現在まで着目してきた共鳴粒子だけでなく非共鳴粒子のダイナミクスまで含めた解析を行うことにより、大振幅の電磁サイクロトロン波動(EMIC波動とホイッスラーモード波動)の波動粒子相互作用について、共鳴粒子と非共鳴粒子の運動の全体像について、観測に基づいた実証的理解を目指す。
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Causes of Carryover |
当初は主にデータ解析環境の整備関連費とAGU参加関連費を支出予定であったが、学内異動によって別経費によって支出、または他で使用していた解析環境の転用が可能になった。また、初期結果の論文出版が年度内には実現しなかったため、その経費も次年度使用に回した。現在、急激な円安と主に海外でのインフレによって、今後、特にAGUなどの海外学会参加関連費、論文出版関連費が当初予想を大幅に上回る懸念がある。解析環境の整備については今後の異動等で必要になる可能性も考慮し、一時凍結、AGU参加の為に支出しなかった経費については、次年度以降のAGU参加、論文出版費への追加の充当を想定している。
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