2023 Fiscal Year Research-status Report
温暖化進行時に起こり得る海洋表層ー内部間の水塊交換変化の検出
Project/Area Number |
23K03501
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
川合 義美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), グループリーダー代理 (40374897)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | サブダクション / 温暖化 / 海洋熱波 / 溶存酸素 / アルゴフロート / 海洋再解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、温暖化に伴い海盆スケールの熱・物質の水平・鉛直輸送がどのように変化するかという点に着目し、北太平洋の海洋表層と海洋内部の水塊交換過程の変化を明らかにすることを主な目的とする。今年度は、研究協力者が中心になって作成した0.1度格子の高解像度全球海洋再解析データ(JCOPE-FGO)を用いて、約30年分の北太平洋全域のサブサクション率・オブサクション率を計算し、アルゴフロート等の観測から作成された1度格子のデータセットから求めた値と比較した。海洋再解析データにローパスフィルタを適用して中規模渦の影響を除去した場合の計算値は、1度格子観測データから求めた値と整合していた。この場合にはサブサクション率・オブサクション率に長期的なトレンドは見られないが、中規模渦の影響を除去しない場合には統計的に有意な増加トレンドが確認された。即ち、空間的に小さなスケールの現象がサブサクション及びオブサクションを近年強めていたことがわかった。 また、海洋熱波が発生した2022年の三陸・北海道南東沖の船舶及びBGCアルゴフロートの観測データを解析した。深度200m以浅の表層付近では高温化による溶解度の低下に伴い低酸素化していたが、それ以深では逆に高温化したところで高酸素化していた。解析の結果、親潮系水より軽い黒潮系水が侵入したことで表層の高酸素の水が押し下げられたことによるものであることがわかった。 係留系による観測を実施するために小型メモリー溶存酸素計と治具を購入し溶存酸素計の検定を行って準備をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に実施できている。2022年の海洋熱波の事例研究は査読付論文誌に投稿中である。海洋再解析データの解析も順調である。しかし、係留系観測については、溶存酸素計の設置を予定していたアメリカ海洋大気庁(NOAA)が黒潮続流域で運用しているKEOブイがNOAA側のトラブルのため入れ替えができない状態である。測器の準備はできているが、現時点で設置・観測の目処がまだ立っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、高解像度海洋再解析データの解析を進め、温暖化や海洋熱波とサブダクション・オブダクションとの関係、時空間変動のメカニズムを調べる。ここまでの研究で中規模渦が重要な役割を果たしている可能性があることがわかったので、その点に注目し衛星観測データも併用して解析を進める。また、サブダクトした亜熱帯モード水及び中央モード水の形成量と南北熱輸送との関係についても調べる。 これまでに得られているBGCアルゴフロートや係留系による溶存酸素データと再解析データを併せて解析することで、海洋内部から表層、あるいは表層から海洋内部に輸送される水塊の輸送経路や年齢の推定を試みる。NOAAのKEOブイでの係留観測が可能になり次第、準備した溶存酸素計を設置し観測を開始する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究成果を発表するのは次年度に開催されるWESTPACやAGU Fall Meeting等が適切と判断し、旅費・その他の経費の使用を見送った。投稿中の論文が受理されて掲載費用が生じるのは次年度になる可能性が高い。次年度は主に出張のための旅費・参加費と論文掲載費に経費を使用する計画である。
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