2023 Fiscal Year Research-status Report
粒子法による豪雨および地震時の斜面崩壊流動化危険度評価手法の開発
Project/Area Number |
23K03511
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
鈴木 拓郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60535524)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 斜面崩壊 / 流動化 / 粒子法 / 地震 / 豪雨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は斜面崩壊が発生した際の,摩擦力の上部伝播過程を物理的に評価し,斜面崩壊が流動化する現象を粒子法に基づいて再現することを目的としていた。初年度は,斜面崩壊が発生した際の土砂内部におけるクーロン摩擦力の作用方向を,ジャミング転移の考え方に基づいて,流動状態の場合は歪み速度の方向に,剛体状態の場合は流速方向と逆方向に作用させるようにした。流動状態とは斜面崩壊が流体的にふるまう状態であり,剛体状態は斜面崩壊が固体的にふるまう状態で,流動状態と剛体状態の境界条件は歪み速度と土砂粒径の関係に基づき,歪み速度の一定値として与えることとした。このように物理的にモデル化した内容に基づいて,既存の粒子法モデルを改良した数値計算プログラムを作成した。そのプログラムを用いて,急勾配斜面に雨水が浸透した場合を想定したモデル計算を行ったところ,急勾配領域に飽和層が発達したときに,斜面崩壊が発生・流動化し,その後に停止する現象の発生が確認された。また,USGSによる過去に実施された土石流の流動と堆積過程の実験の再現計算を行った。本研究によるモデルを導入しない従来の粒子法で計算した場合は実験結果よりも土砂の到達距離が短くなったが,本研究のモデルを導入した場合には土砂の流下距離が長くなり,実際の実験結果に近づくことが明らかになった。以上により,斜面崩壊の流動化過程を想定したモデル化の基本部分の構築は達成できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,2年目に実施する水路実験の条件を効率的に設定するために,モデル構築を先行して実施することになっていた。計画では,モデル構築は基本となる土石流の粒子法モデルをベースに,歪速度の方向に応じた摩擦力を作用させるモデルを構築し,ジャミング転移の考え方に基づいたモデル境界条件の設定方法を検討することとしていた。初年度は,モデルにおける剛体状態・流体状態の境界条件の設定方法を決定したうえで,ジャミング転移に基づいた物理モデルを構築し,数値計算プログラムの動作確認までを行うことができた。以上方から,計画通りに研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は,急勾配水路を用い,水路内に設置した不安定土砂に徐々に水を浸透させた際に生じる崩壊・流動化状況を計測する。側面から高速ビデオカメラで撮影して分析し,土砂内部における複雑な速度分布などを解析し,すべり面からの摩擦力の上部伝播過程を解明する。この結果から,粒子法モデルにおけるジャミング転移の境界条件の設定について更なる検討を行う。また,降雨および地震の事例検証に向けて,データの収集・整理を進める。その後,3年目の最終年度にかけて,降雨時,地震時のそれぞれについて数値計算による事例検証を行い,必要に応じて改良を加え,最終的に斜面崩壊流動化危険度評価手法を確立する。
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Causes of Carryover |
研究申請時には,水路実験を先行して実施し,その結果に基づいて数値計算モデルを構築する計画としていた。しかし,研究開始時点では,水路実験における条件設定を効率的に行うために,数値計算モデルの構築を先行して初年度に行い,水路実験を2年目に実施するように計画を変更した。そのため,水路実験の材料費を2年目に購入することになったため,残額が生じた。生じた残額と2年目の配布額を合わせて実験材料等を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)