2023 Fiscal Year Research-status Report
沈み込み帯浅部の地震波速度・異方性構造とプレート境界すべり様式の関係
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23K03522
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 涼太 東北大学, 理学研究科, 助教 (10735963)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 地震波速度構造 / 常時微動 / 表面波 / S-net / 微動 / プレート境界地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道・東北沖の千島・日本海溝沈み込み帯浅部海域下の3次元S波速度・異方性構造を高い空間分解能で推定するため、海底基盤地震観測網S-net及び過去の稠密海底地震観測網で観測された常時微動記録を解析した。S-netを用いた解析では、方位異方性構造の推定のため、常時微動の相互相関関数から抽出した表面波の位相速度の方位依存性を調べた。その結果、観測された位相速度の方位依存性には、周期20秒程度の長周期帯域では常時微動源の非等方性の影響、より短周期帯域では位相速度空間不均質の影響が強く含まれることが明らかになった。このことは、S-netで観測された常時微動を用いて地殻・上部マントルの異方性構造を推定するためには、これらの影響を補正することが重要であることを示している。また、振幅情報を用いて常時微動源の非等方性による見かけの位相速度方位依存性をモデリングし、この影響の補正方法を提示できた。より小スケールの不均質構造解明を目的として、2006-2007年に自己浮上型海底地震計を用いて日本海溝北部で実施された稠密地震観測のデータを解析した。常時微動の相互相関解析により抽出した周期10-20秒の表面波の位相速度分散曲線を推定した結果、観測網北部における位相速度は観測網南部に比べて約20%程度遅いことが明らかになった。観測網北部のプレート境界ではスロー地震の一種である微動活動が活発であるのに対し、南部では微動空白域となっており、その中に過去のプレート境界大地震の破壊開始点が位置する。観測された位相速度変化はプレート境界の微動分布と空間的に対応しているため、不均質構造によってプレート境界の滑り様式が規定される可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海底地震観測網のデータ解析が順調に進んでいる。また、プレート境界滑り様式と空間的に対応する位相速度の空間変化が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
海底地震観測網を用いて高分解能で3次元速度構造を推定するとともに、プレート境界の地震・スロー地震活動との詳細な比較を行い、不均質構造とプレート境界滑り様式との関係性を議論する。
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Causes of Carryover |
研究が進捗したことにより複数の論文を執筆中であり、出版のために要する英文校閲費・出版費として次年度に使用する。また、データ解析・数値計算の効率化のため、次年度により高性能な計算機を導入するために使用する予定である。
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