2023 Fiscal Year Research-status Report
Crystal structure of high-pressure hydrous minerals coexisting with microdiamond and water supply to the deep mantle
Project/Area Number |
23K03530
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉朝 朗 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 特任教授 (00191536)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 水酸化物スピネル / 含水クロマイト / Saikailite / マントル中の含水相 / 地球深部への水供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで知られていなかった、スピネル型構造の水酸化物を長崎県西海市のマイクロダイヤモンドを含む蛇紋岩メランジェ中に発見した。いわゆる含水クロマイトであることを分析や単結晶構造解析から確定した。最新の科学技術を用いて、精密構造や同位体分析、各種分光学的データ等を揃えてた。この物質は地球科学的のみならず、無機化学、物性学、物質科学等において重要な結晶であることが確認できた。国際新鉱物命名委員会に審査依頼を提出して、正式に新鉱物saikaiite(スピネル型水酸化物)として認定されるようにデータを揃えてきた。また、同じ岩帯にいくつかの高圧下で形成された未知含水鉱物群を発見し、結晶構造の確定を試みた。この蛇紋岩メランジュ中の鉱物群は、非火成岩起源として、水に富むマントルについての極めて重要な情報源であることが分かった。鉱物にみられる水素の固溶は、多様なイオン種とペアになった置換や陽イオン欠陥の形成に伴われて起こることを突き止めた。結晶の精密構造解析と様々な評価法を組み合わせ、結晶構造中の水素の存在状態についての解明に努め、貴重な成果が得られた。このスピネル型水酸化物では、水素量が飽和状態であることや共存相の産状等から、90km以深のマントル内での熱水流体の存在を強く示唆している。国際誌に掲載される十分なデータと研究内容が得られた。今、新鉱物としての命名を委員会にて認めてもらう段階にある。限段階では、命名委員会による投票に漕ぎつけるまでのデータの収集に至り、命名委員会委員長と詰めの段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この鉱物は全く新しい元素置換を伴い、スピネルグループとしてこれまでの命名規定では対処できない新鉱物である。そのため、国際命名委員会委員長と多くの調整や提案書の改定などを行っている。新たな定義の作成も必要な可能性もあり、新鉱物としての命名に時間を要している。何とか方向性が見えてきたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
新鉱物Saikailitetとして命名の承認を得たうえで、鉱物学的に主要な国際誌に掲載し、研究を公表し、関連物質を含めた研究を展開してゆく。この鉱物で見られる元素置換タイプや構造緩和機構など、重要な結晶科学的成果を公表して、関連する鉱物結晶の研究を進める。さらに未知鉱物の科学的記載に努め、新たな鉱物学的展開を図る。最新の科学技術を用いて、結晶構造や化学分析、各種分光学的データを揃えてゆく。この地域で世界的に初めて発見されたマントルスラブ内部の温度勾配の小さな岩帯での鉱物記載を進める。また、地球科学的重要性を広く伝え、近隣の分野との研究の深化にも努める
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Research Products
(6 results)