2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Erosion-Resistant Cr/CrN Multilayer Coating Films with High Crack Growth Retardation Effect
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23K03576
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
米倉 大介 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70314846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下 一也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (70274256)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多層膜 / エロージョン / アークイオンプレーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,Cr層厚さの比率が異なるCr/CrNの組合せを3組積層した試験片及びCrN層の厚さを固定し,Cr層厚さが異なるCr/CrN層を1組積層したバイレイヤー材を作製し,硬さ,スクラッチ損傷特性,エロージョン特性等に及ぼすCr層厚さの影響を検討した.また,表面形状測定装置,SEM,およびFIBを用いて損傷部の表面・断面の観察・測定を行った.以下に得られた主な結果を示す. 1. 投射圧力0.8MPa,投射角度30°の条件下でCr90%材,Cr64%材にガラスビーズを投射した場合,300g投射しても多層膜が大きな損傷を受けることなく維持していた.一方,Cr36%材では100g投射時点で膜が消失したことから,Cr層の割合が高い方が耐エロージョン性に優れていることがわかった. 2. 投射圧力0.8MPa,投射角度90°の条件下でガラスビーズを投射した場合,Cr90%材,Cr75%材では50g投射しても膜が大きな損傷を受けることなく維持していた.一方でCrの割合が64%以下の試験片とCrN単層材では,ガラスビーズを1g投射した時点で基材が露出してしまった. 3. 投射圧力0.8MPa,投射角度90°の条件下でバイレイヤー材にガラスビーズを0.2g投射したところ,Cr層が厚い試験片ではき裂の進展がCr層によって抑制されていた.一方で,Cr層の厚さが一定以下であると,Cr層によってき裂の進展を抑制できていなかった. 4. 投射圧力0.8MPa,投射角度90°の条件下でアルミナ粒子を1.5g投射した場合,Cr90%材では膜が大きな損傷を受けることなく維持していた.Cr75%材では,同心円状の縞模様が観察され,多層膜の下部まで損傷が及んでおり,Cr64%材では,アルミナ粒子を1.5g投射した時点で基材が露出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,まずCr/CrNの組み合わせを3層積層した試験片を作製し,ガラスビーズを投射材料とした場合のエロージョン特性に及ぼすCr層厚さの影響を検討した.その結果,延性層であるCr層を一定以上の厚さとすることで,投射角度30°と90°の両条件において多層膜の耐エロージョン特性が向上することがわかった.また,バイレイヤー試験片を用いて少量投射試験を行い,損傷部をFIB加工して深さ方向の損傷状態を検討した結果,硬質層であるCrN層の厚さは同じでも,その下に成膜したCr層の厚さによって損傷状態が大きく変わることがわかった.特にCr層が薄い場合では,CrN層に発生したき裂の進展をCr層で抑制できないことがわかった. このようなCr層の働きを別角度から検討するために,Cr/CrN-3層材を用いたスクラッチ試験も行い,損傷部を広範囲にわたってイオンミリングすることで,多層膜の損傷過程の詳細な検討を行った.その結果,延性層であるCr層の比率の高い試験片では,多層中のCrN層から発生したき裂の進展をCr層で抑制することができることがわかった.特に層数を変えずに各層を厚くした場合にその効果が顕著となることがわかった. そこで各層を厚くしたCr/CrN-3層材を作製し,これまで0.5g以下の投射量で基材が露出したアルミナ粒子を用いて,エロージョン特性に及ぼす厚いCr層の効果の検証を行った.その結果,Cr層の割合が高いほど膜の損傷が少なくなることがわかった.以上の結果から,Cr層の比率だけではなく,その厚さを一定以上とすることで,多層膜の耐エロージョン性を向上できることを明らかにできた.また,膜の残留応力の測定についても,膜中に形成されてしまうドロップレット量と残留応力値に関する基礎データを揃えた.以上の進捗状況から,当初の計画通り順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては,令和5年度の知見をもとに耐エロージョン性のさらなる向上を目指す.特にき裂進展抑制効果が発現する条件を明らかにするため,さらに詳細なCr層厚さの効果の検討を行う.特に投射粒子形状,投射粒子径及び多層膜中の残留応力との関係に注目し,詳細な断面観察をもとにした損傷過程及び損傷機構の解明を目指す. 以上の検討を通して,多層膜の潜在能力を効果的に引き出し,高い耐エロージョン性を有する多層膜の基本的な設計指針を構築する.
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