2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K03715
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田川 俊夫 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (90294983)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 沸騰・凝縮 / 数値シミュレーション / 格子ボルツマン法 / 濡れ性 / 相変化モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度に実施した研究は以下の通りである.格子ボルツマン法(LBM)による相変化をともなう気液二相流コードの開発を行った.その解析手法は擬似ポテンシャル法を適用した.これにより気液界面を表現することができる.温度場の解析にはLBMを適用することも可能であるが,メモリ使用量の削減のために有限差分法を適用した.実施計画の段階で想定していたフェーズフィールド法を用いたLBM解析手法の場合と比べて高密度比ケースへの適応がやや困難であるという問題点は含んでいるが,まずはコード開発の容易性の観点から擬似ポテンシャル法にて研究を実施した.その際,Graphics Processing Unit (GPU)を用いて,計算の高速化と高効率化を目指した.これにより計算結果のアウトプット量の増加と精度の向上をはかることができた. プール沸騰現象では,過熱度の増加とともに,自然対流,核沸騰の開始,限界熱流束,遷移沸騰領域,そして膜沸騰への移り変わることが実験的に知られている.このことを本手法により再現できるかどうかをまず確認した.気液2相状態にある密閉空間系を想定し,厚みのある固体壁の底面から一定温度で加熱される2次元シミュレーションを実施した.気泡核生成を容易にするために,加熱面から少し離れた上部に円形の補助ヒータを設置した.シミュレーションの結果,自然対流から膜沸騰の領域まで沸騰曲線を定性的に再現することに成功した.この研究成果は,国際誌ICHMTに掲載された.これと同様な二次元系において印加電場の沸騰曲線への影響を調査した.これについては国際会議ISTP33にて口頭発表を行うとともに,その研究成果はATEに掲載された.その他,伝熱表面の微細構造や濡れ性を考慮した3次元シミュレーションと流動沸騰に関する研究成果がそれぞれIJHMTとPhysics of Fluidsに掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
格子ボルツマン法に有限差分法を併用し,擬似ポテンシャル法による解析コードの開発をおこない,幾つかの沸騰シミュレーションを実施した.研究成果の一部は,第60回日本伝熱シンポジウムやThe 33rd International Symposium on Transport phenomena (ISTP33)において口頭発表を行った.その成果は,Applied Thermal Enginneringなどの国際誌に掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,相変化モデルの改善をはかる.LBMによる相変化解析においては,擬似ポテンシャルLBMを改良したものが比較的よく用いられる.しかし,これらの適応は中密度比に限られている.水と水蒸気の密度比は大気圧下では1000以上となり,これは高密度比にある.そこで,高密度比への適応の観点からフェーズフィールドLBMによる相変化解析手法の開発に今後注力する.
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Causes of Carryover |
理由としては,当該年度に発表を予定していた海外での国際会議への出席を取りやめたことがある.また,次年度に大型備品(GPUコンピュータ)の購入や欧州での国際会議出席を控えており,当初予定より多めの助成金が必要とされる見込みのため.
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