2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of SERS substrate made of melt-blown non-woven fabric and its application to odor sensors
Project/Area Number |
23K03881
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田原 祐助 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (80585927)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 表面増強ラマン散乱 / 化学センサ / メルトブロー不織布 / 匂い |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,ポリプロピレン製とナイロン製のメルトブロー不織布を用いた表面増強ラマン散乱(SERS)基板の試作をおこない,SERS基板としての基礎的な特性評価と匂いに対する応答関して基礎的な評価をおこなった。SERS基板作製のための貴金属粒子には,硝酸銀水溶液をヒドロキシルアミンで還元させて作製したAgナノコロイド溶液を用い,Ag粒子を不織布に吸着させることでSERS基板を作製した。Agナノコロイドは,ゼータ電位計で粒子径を確認した。作製した不織布製SERS基板は,走査型プローブ顕微鏡 (SPM),SEM,接触角測定で評価し,メルトブロー不織布の形状やAg粒子の分布,表面観察をおこない物理的な特徴を評価した。揮発性有機化合物 (VOC)として,ベンズアルデヒド,フェニチルエチルアミンを匂い分子として用い,ヘッドスペース法で揮発した匂い分子のラマン測定をおこなった。ベンズアルデヒド,フェニチルエチルアミン共に,それぞれに準じたラマンスペクトルを確認することができ,メルトブロー不織布のSERS基板への有用性を示すことができた。また,不織布の材質によってラマン散乱強度の差異に違いがみられ,測定対象物と不織布の物理化学的特徴によって吸着量に影響を及ぼすと考えられ,基板材質を選ぶことで分子のふるい分けに期待できることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,SERS基板の作製方法とVOCのSERS応答を得ることを目指した。作製方法を確立することができたため,次年度進める予定の応答感度等の最適化に関してのパラメータの抽出ができた。さらに,VOC応答を検出することができ,作製したSERS基板の匂いセンサへの応用が可能であることが示された。以上より,おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,測定対象としてベンズアルデヒド,フェネチルエチルアミンをヘッドスペース法にて不織布SERS基板に吸着させてSERS応答の計測をおこなった。次年度は,目的とするVOC測定濃度を発生させる実験系の確立をおこなう。具体的には,窒素ガスによるVOCのバブリングと,マスフローコントローラーを用いて目的濃度を発せさせる実験系を作り,低濃度測定の実験をおこなう。ラマン散乱の測定は,VOCのガスをSERS基板に流しながら測定することで測定の即時性を進める。また,不織布の形状やメルトブローだけでなくエレクトロスピニングによる不織布も検討し,高感度検出が可能なSERS基板を作製する。最終的には,食品サンプルといった実サンプルの匂い検出を目指しており,実験に用いるVOCガスの種類を増やし,測定の最適化を進める。
|
Causes of Carryover |
大学の共通機器使用料が予想より少なかった。これは,使用する装置が他の研究室の装置を無償で使用することができたためである。余った予算は,次年度にラマン分光器にもちいるレーザープローブを購入するために用いる。理由として,本年度は顕微ラマン分光計を用いていたが,レーザー照射範囲を広げることで,不織布構造に起因した測定場所によるばらつきを抑えるためである。
|