2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on universalization of inflow prediction method for flood control with all-out efforts of existing dams
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23K04039
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
中津川 誠 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (10344425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 洋介 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10735103)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ダム流入量予測 / 予測手法の一般化 / アンサンブル予測雨量 / スパースモデリング / Elastic Net / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,気候変動の影響とみられる大水害が全国的に常態化するなか,治水目的のダムだけでなく,利水ダムも含めたあらゆる既存ダムの総力をあげて治水機能の向上を図ることが求められている.そのため,いついかなるダムであっても流入量を適切に予測でき,事前放流などで貯留能力を増大できる方策が求められている。そこで,いつでも(未経験事例でも,どの時期でも),どこでも(利水専用や中小規模のダムでも),現実的に(予測の不確実性を見込んで)適用できる予測手法の開発を目指す. 3か年の研究の1年目となる令和5年度は,研究目的の一つである特定のダムのみならず,一般性のある洪水時流入量予測手法の提案という課題に取り組んだ.これにより,北海道内の17か所におよぶ大規模から小規模にわたる多目的ダム,治水ダム,利水ダムに加え,東北地方の3か所の多目的ダムを対象に,汎化性能の高いElastic Netに基づく流入量予測モデルを提案した.これらのダムを流域面積で分類することで,各グループ内で共通した予測手法の一般化が可能であることがわかった。 もう一つの目的である現実的に適用できる予測手法として,アンサンブル予測雨量を用いることで,予測の不確実性を反映できるダム流入量の予測手法を提案した.そこで,近年出水に見舞われている北海道のダムを対象に.スパースモデリング手法の一つであるElastic Net を使用し,流入量予測をおこなった.その際にモデルの入力変数に,アンサンブル予測雨量であるMEPS(Meso-scale Ensemble Prediction System)を導入した.さらに,貯留関数法による予測結果との比較を行い,精度評価をおこなった.結果的に,Elastic Net にMEPS を導入することで治水上安全側の結果を与える予測が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では,1年目で(1)既往洪水事例およびダムの情報収集・整理,1年目から2年目にかけて,(2)ダム流入量計算モデルの予備検討を予定していたが,いずれの事項についても所定の作業を達成した.とくに予測モデルについては,個々のダムの学習データから確立したモデルでは予想以上の良好な結果が得られることがわかり,改めてスパースモデリング(Elastic Net(EN))の高いパフォーマンスが検証された. これらに基づき,研究目的の一つであるダムを類型化し,グループ内で共通して使える一般化予測手法の提案を目指した.この結果,北海道内および東北地方のダムについては流域面積で分類することで,類型化されたグループ内で共通したモデルが適用できることが検証された. さらに降雨の不確実性を見込んだ現実的な予測については,アンサンブル予測雨量(MEPS)を用いた流入量予測を試みた.その結果,MEPSは実際の雨量を過小に予測する傾向が確認できたため,3割増し程度とすることで,危険側の予測を回避できることがわかった. 以上に加え,積雪寒冷地のダムでは,気候変動に伴い夏季だけでなく,春先の融雪に降雨が相まって洪水をもたらす可能性もあり,融雪予測情報も必要とされる.それに必要な積雪や気温に関する情報も収集整理をおこなった.なお,情報として用いられる降雨実況値は「解析雨量」,積雪実況値は「解析積雪深」,降雨や気温の予測情報はMSMといったオープンデータを用い,全国どこでも適用できるような手法の提案ができることに留意した.
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Strategy for Future Research Activity |
内容としては当初計画通り進める.3か年の研究の2年目となる令和6年度は,1)これまで提示してきた流入量予測手法の一般化を進めるために日本全国のダムを対象に流域面積だけでない流域の形状や勾配といった要因なども考慮した類型化や一般化といった検討事例の増加,2)アンサンブル予測雨量を用いた流入量予測事例の増加,3)降雨に加えて融雪も勘案できる流入量予測の適用の検討をおこなう.以上によって,積雪寒冷地を含めた任意のダムに季節を問わず適用でき,また,降雨予測の不確実性という現実と向き合った流入量予測手法の提案を目指し,現実のダム管理への実装に道筋をつける.
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Causes of Carryover |
令和5年度に予定していた計算機導入が他の研究費で整備でき,繰越額が537,970円となったが,その分は計算作業の適切なシェアリングによって補完できたので,目標達成に影響を及ぼすことはなかった. 繰越した分については令和6年度に予定しているオープンアクセスの英文雑誌投稿料($3,680なので500千円以上の見込)・英文校閲費に利用して,成果の幅広い発信に努める予定である.
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