2023 Fiscal Year Research-status Report
Basin flood control and enviromental management based on probabilistic information using innovative technology
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23K04044
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 健一郎 神戸大学, 都市安全研究センター, 准教授 (60420402)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 流域治水 / 球磨川流域 / 川辺川ダム / 人吉 / 1m解像度標高データ / 日吉ダム / 亀岡盆地 / 霞堤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主に3つの研究成果が出た. 一つ目は九州熊本の球磨川流域を対象として,現在建設が予定されている川辺川ダムの洪水防御操作を実施した場合の治水効果を算定した.ダム効果の算定は下流の人吉地域を対象として実施している.結果として,川辺川ダムの効果は治水に限定すればそれなりにあることがわかった.治水ダムの効果をモデルに組込み,流域全体での検討を実施した点が特徴である.また,人吉地域での治水効果は5m解像度の標高データによる洪水計算による検証であり,現状では最先端の試みである.計算には富岳を用いた.入力となる気象データとしては,確率的検討が可能である2km解像度の超多数の1000アンサンブル気象計算結果を用いた. 二つ目は計算解像度を1mとした場合の洪水氾濫流の計算精度の検証である.兵庫県は全県における1m解像度の標高データを公開したので,これを用いた洪水氾濫解析の精度検証を1m標高データをもとに,2mにリサンプル,また5mの国土地理院データを用いることにより実施した.この際,家屋データを用いて,家屋を非浸透域とする場合の計算結果も比較した.超高解像度浸水計算の有用性を示す結論を得た. 三つ目は淀川流域を対象として,日吉ダムの治水効果の算定と,亀岡盆地の現存する霞堤の効果を検討した.250m解像度の淀川流域分布型降雨流出モデルを用いて,特に桂川流域を対象とした流出計算を行い,これにネスティングする形で亀岡盆地及び霞堤の5m解像度洪水計算を実施した.結果として,下流の京都における亀岡盆地の効果などを推定することができた. これらの成果は土木学会論文集(水工学)や,国際水圏環境工学会(IAHR)のプロシーディング論文などとして公表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体はおおむね順調に進展している. 流域治水に関する研究は,重要流域である球磨川流域や淀川流域などを対象として良い成果が出つつある.また,確率的評価についても,超多数アンサンブル降雨が現存する地域での研究であるため,確実に意義があると判断できる段階で,スパコンなどを用いて多数計算をすることは容易である.他方,治水ダムについての検討はできたが,田んぼダムについては農水省の田畑の筆ポリゴンデータを検証している最中であり,今後進展させる予定である. 領域洪水計算については,ネスティングして領域を詳細計算するモデルは構築しており,これまでの5m解像度だけでなく1m解像度でも計算が可能になっている.家屋データを用いた家屋形状を考慮した計算も可能であり,道路に沿った流れなども再現できる. したがって,道具や手法は完成してきており,最終的な目標を明確にした上で評価を実施する段階である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については: 研究実績の概要で記載したように,球磨川流域と淀川流域については高いレベルでのモデルが完成しつつある.田んぼダムについて研究するのが今後の課題となる.ここで言うモデルとは流域レベルでの降雨流出モデルとネストされた領域洪水モデルである.スパコンを使用した超多数計算はコストが高いので,モデル設定が確実になった段階での最後の作業と考えている. 他方,流域,治水ダム、田んぼダム,伝統的治水工法(例えば霞堤)、治水工法(ワンド)の対象領域を増やすことを検討している.神戸大学から埼玉大学に異動したため,これまで西日本が中心だった検討を東日本にも広げることを考えたい.埼玉県には荒川,利根川などが貫流するため,こうした川の対策を検討したい. コロナの伝播を考慮した人間行動モデルの開発は,避難行動モデルを改良する形で研究を開始する.コロナが以前ほど問題となっていないのが懸案な点である. 次次年度については,施設からの放流タイミングの最適化による最適な治水手法について検討するなどより高度な検討を模索していく予定である.
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Causes of Carryover |
昇進に伴う大学の異動のための準備により,即座に実施しにくい項目があった.現地調査が予定ほど実施できなく,旅費,謝金などを次年度に繰り越した等のため次年度使用が生じた.2024年度からは埼玉大学に異動済みであるため,予定通り執行したい.また,物品購入などの必要が増すため,そうした用途での使用を進める.
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