2023 Fiscal Year Research-status Report
Optimized operation of reservoir systems based on real-time assessment of drought risk and flood retention capacity of green-gray infrastructures in agricultural land
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23K04055
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Research Institution | Kajima Technical Research Institute, Kajima Corporation |
Principal Investigator |
野原 大督 鹿島建設株式会社(技術研究所), サスティナブルソサエティラボ, 主任研究員 (00452326)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ダム貯水池操作 / アンサンブル予報 / 洪水調節 / 利水 / 発電 / 事前放流 |
Outline of Annual Research Achievements |
現業中長期アンサンブル気象予報を考慮したダム貯水池やため池の最適な事前放流手法の開発に資するため、多目的ダム貯水池を対象として、現業気象予報モデルの更新による事前放流意思決定精度への影響の評価を実施した。中長期アンサンブル予報のうち、中期予報に相当する気象庁週間アンサンブル予報の格子点値(GPV)の対象に、2020年3月まで配信されていた週間予報アンサンブルGPV(旧予報と呼ぶ)と,その後継の高分解能日本域GPV(新予報と呼ぶ)を対象として、両予報が重複して発表されていた期間における降水量予報値の誤差特性の違いを分析した。その上で、ダム操作の長期シミュレーションを通じて、予報の誤差特性が事前放流判断に及ぼす影響を分析した。その結果、新予報は旧予報と比べて、事前放流の意思決定の上では治水面でやや有利に、利水・発電面でやや不利となるような誤差特性を有し、事前放流による治水効果と利水・発電面での影響の少なさの双方を改善することは難しいこと、貯水容量の増強等の施設整備を行わずにこの競合関係を根本的に解消するには、参照する予報の更なる高精度化が重要となることなどを明らかにした。 さらに、施設整備を伴わずに多目的ダム貯水池の事前放流の効果を高める方法の一つとして、ダム貯水容量の再配分の効果について検討するシミュレーションモデルを構築した上で、国内の多目的ダム貯水池を対象に利水・発電容量と洪水調節容量の配分を変化させながら事前放流を含むダム貯水池操作の長期シミュレーションを実施し、対象ダムの貯水容量再編時における洪水調節と利水・発電とのトレードオフ関係を明らかにした。並行して、農地・水利施設の洪水緩和機能の評価に向け、特に水田とため池に着目した降雨時の雨水貯留機能の評価モデルの構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究におけるシミュレーション評価モデルの構築については、当該学術分野の動向や社会情勢に合わせて実施順序を一部入れ替えるなどしているが、研究開発計画全体で見ると概ね順調に進んでいる。一方で、所属機関における他業務での繁忙により、当該研究課題の遂行にエフォートを十分に割けていないことと、研究申請や計画の段階で参加することを記述していた欧州での国際会議への参加が所属研究機関の意向により不規則な形で取り止めとなり、成果の発表や関連研究者との意見交換の機会が得られなかったことなどから、新規理論構築などの研究の進捗にやや遅れが生じているとともに、当初計画と比較して予算の執行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の見直しを逐次行い、現在の研究環境と条件の中で可能な限り研究課題の進捗が得られるよう、調整を行う。また、所属研究機関に対しても、交付申請後に研究計画の不規則かつ重大な変更を研究代表者に強いることが無いよう、科学研究費助成事業の制度や趣旨についての理解を促し、科学研究費助成事業の重要な精神として位置付けられている研究者の自由な発想に基づく研究活動が円滑に行われるよう、研究環境の向上に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
為替レートの悪化や物価の上昇により国際会議参加旅費が大きくなる可能性があったため、念のため計算機購入の時期を次年度入金後に遅らせていたことと、研究課題申請時および交付申請時の研究計画で位置付けていた国際会議への参加が研究機関の事情により結果的に取り止めになったことなどにより、次年度使用額が生じた。
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