2023 Fiscal Year Research-status Report
Control of biofilm formation during generation and migration of suspended solids in water distribution systems
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23K04086
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山岡 暁 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (40757499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荷方 稔之 宇都宮大学, 工学部, 助教 (30272222)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 生物膜 / 病原性細菌 / 水道管洗浄 / ピグ洗浄 / 従属栄養細菌 / ゲノム解析 / 16S rRNA菌叢解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、独自に開発した調査研究手法を活かして、配水系統における浮遊物の移動プロセスを追跡し、管壁への付着膜生成トリガーとなる細菌の存在や低栄養下での成長プロセスの解明に取り組み、生物膜(バイオフィルム)形成プロセスにおける水質低下要因を明らかにするものであり、将来、世界中の水道水の直接飲用の予防保全に寄与する可能性を有する。 研究は以下の2つの目標を設定した。目標1:有機・無機浮遊物の発生・移動プロセスの解明、および目標2:水溶性物質を取り込んで生物膜を生成し、管内に付着するメカニズムの解析。研究は以下の4ステップで実施した。1) 国内外での懸濁水とスラッジのサンプリング、2) 付着物の組成・物性の定量分析、3)有機・無機浮遊物の発生・移動プロセス分析、4)DNA抽出による付着媒体となる細菌のゲノム解析。 当初設定した4ステップで得た研究実績は以下のとおりである。ステップ1のサンプリングは、海外ではコロナ禍で実施できなかったが、国内の10サイトで実施した。ステップ2の定量分析は、10サイトのサンプリング全てを対象に実施した。ステップ3の発生・移動プロセス分析は、同一配水系統での上下流での複数サンプリングの組成分析結果から具体的なプロセスを想定することが可能となった。ステップ4の細菌の特定では、10検体を対象として次世代シーケンサーによるゲノム(菌叢)解析を実施し、9検体から結果を得た。 初年度の研究では、以下の成果が得られた。採水の濁度と従属栄養細菌数の関係から、配水管内の付着物量に従属栄養細菌数が比例すると考えられる。同一配水系統で上流の配水池の堆積物と下流の配水管内の付着物の組成が類似していたため、浮遊物の移動が生物膜形成要因となった可能性がある。生物膜を形成する可能性が高いPhreatobacter属の細菌は配水池では微量だったが、配水管内で増殖した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に従い、以下の4ステップで研究を遂行した。1) 国内外での懸濁水とスラッジのサンプリング、2) 付着物の組成・物性の定量分析、3)有機・無機浮遊物の発生・移動プロセス分析、4)DNA抽出による付着媒体となる細菌の特定。 当初計画の4ステップを以下のように実施した。ステップ1のサンプリングは、海外ではコロナ禍で実施できなかったが、国内の10サイトで実施した。ステップ2の定量分析は、10サイトのサンプリング全てを対象に実施した。ステップ3の発生・移動プロセス分析は、同一配水系統での上下流でのサンプリングの組成分析からプロセスの予測が可能となった。ステップ4の細菌の特定では、次世代シーケンサーによるゲノム(菌叢)解析を10検体を対象として実施し、9検体から結果を得た。 国内での懸濁水とスラッジのサンプリングは、水道事業者によって実施される洗浄工事に伴い行われるために、計画時点で数量を確定できなかったが、関係者との調整により予定数量を得ることができた。 初年度の国内を対象とした研究では、配水管内で生物膜が形成されている可能性が明らかになった。また、目標1「有機・無機浮遊物の発生・移動プロセスの解明」に対して、配水系統における浮遊物の移動プロセスを予測できる結果が得られた。目標2「水溶性物質を取り込んで生物膜を生成し、管内に付着するメカニズムの解析」に関して、生物膜を形成する上で優占化する細菌を特定することができた。したがって、目標1および2を達成するための基礎的な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
目標1および2を達成するための初年度の基礎的な研究成果を踏まえて、配水系統の水質と生物膜との関係に着目し、今後の研究では、①水道管内で形成される生物膜と管内の有機・無機に関する水質環境との関係の分析、および②配水池と配水管内の水質の関係の解明の2項目を目的とした. 目的①は、生物膜を生成する特定細菌と水質環境の関係を統計解析によって明らかにする。配水系統における濁水およびスラッジ(付着物)を採取し、配水池堆積物・配水管付着物の菌叢解析を実施する。採取した懸濁水とスラッジから、学内において、全DNAの抽出・部分16SrRNA遺伝子のPCR増幅・電気泳動・分離DNA抽出・塩基配列決定・国際データベースによる相同性検索の実施、あるいは委託による次世代シーケンサ―(NGS)によるゲノム解析によって細菌種を特定する。病原性や生物膜生成に関与すると考えられるPseudomonas属やSphingomonas属、 Mycobacterium属などの細菌種を判別し、水道管内付着への影響を分析する。水質環境では、水中の無機・有機および溶解性・不溶解性の物質に分類し、試料を分析する。配水池清掃前・配水管洗浄前の水の電導度、無機物イオン濃度、従属栄養細菌数などに着目する。 目的②では、同一水道配水系統における配水池堆積物および配水管付着物に存在する細菌を比較して堆積・付着関係を明らかにする。主成分分析により配水池と配水管内の水質環境の総合特性も比較する予定である。 以上より、配水池、配水管網の一連の配水系統において細菌種を特定し、生物膜が生成され管内に付着するメカニズムを解明する予定である。これらの研究成果は、2025年度までに論文とし、国際会議などで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、インドネシアの水道配水系統でのサンプリング調査および水質試験などを計画していたが、新型コロナウィルスの影響により実施できなかった。次年度は、当初計画にしたがって実施する予定である。
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