2023 Fiscal Year Research-status Report
超親水性溶存有機物の消毒副生成物前駆体としての重要性
Project/Area Number |
23K04088
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
多田 悠人 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (70943611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越後 信哉 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (70359777)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 消毒副生成物 / 超親水性溶存有機物 / 親水性相互作用クロマトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は,超親水性溶存有機物の消毒副生成物生成能を体系的に評価し,必要とされる処理レベルを示すことである。2023年度は消毒副生成物の分析手法の開発,超親水性溶存有機物に由来する消毒副生成物生成能の評価手法の検討を行った。加えて,超親水性溶存有機物の分画法の検討を行った。 具体的な成果は以下通りである。まず,本研究で対象とする消毒副生成物であるトリハロメタン類,ハロ酢酸類,ハロアセトニトリル類(塩素化体・臭素化体を含む)の定量方法を開発した。特に,ハロ酢酸類,ハロアセトニトリル類に関して,煩雑な前処理を必要としないLC-MS/MSを用いた直接注入による簡便で迅速な定量法を開発した。次に,超親水性溶存有機物との分離が困難な臭化物イオン存在下における,消毒副生成物生成能の評価手法を検討した。琵琶湖・淀川水系の複数地点で採取した環境水に臭化物イオンを加え塩素処理を行ったところ,個々の消毒副生成物生成量は大きく変動したが,分子内のハロゲン原子数で分類した各カテゴリー(モノ・ジ・トリ体の3種類)内の合計濃度は一定であることが分かった。分画前後や採水地点において変動する溶存有機物と臭化物イオンの濃度比に関係なく使用できる本手法は非常に有用である。最後に,超親水性溶存有機物の特性解析手法として,限外ろ過膜(3-100 kDa)や固相抽出(陽イオン交換および陰イオン交換カートリッジ)を用いた分離手法の検討を行った。超純水を用いたブランク試験により,これら手法に起因する溶存有機物量および消毒副生成物生成能への影響がないことを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は,トリハロメタン類,ハロ酢酸類,ハロアセトニトリル類(塩素・臭素化体を含む)の定量方法を確立し,夾雑物の存在下でも超親水性溶存有機物に由来する消毒副生成物生成能を評価する手法を確立した。また,限外ろ過膜や固相抽出を用いた分離手法を確立し,超純水を用いたブランク試験において塩素処理などの後続の実験に本分離手法が影響を与えないことを確認した。次年度以降に行う超親水性溶存有機物の消毒副生成物生成能の把握や特性解析に必要な実験・評価手法の整備が完了した。以上より,今年度は実施計画に沿っておおむね順調に研究を遂行することができたと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の計画では,2024年度は,複数の水域で採水した水道原水中の超親水性溶存有機物の消毒副生成物生成能プロファイル(各消毒副生成物の濃度とそのパタン)と共存物質が消毒副生成物に与える影響を評価し,2025年度は実際の浄水施設内での超親水性溶存有機物の動態と除去特性および各浄水プロセス前後での副生成物生成能プロファイルを得ることとしている。ここまでは順調に計画を進めることができており,引き続き予定通りに研究を遂行する予定である。
|