2023 Fiscal Year Research-status Report
水処理を介した牡蠣殻廃棄物の持続可能な処理と食糧生産 -牡蠣殻を核とした資源循環-
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23K04098
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Research Institution | National Institute of Technology (KOSEN), Kure College |
Principal Investigator |
谷川 大輔 呉工業高等専門学校, 環境都市工学分野, 准教授 (40714283)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 牡蠣殻 / 下降流懸垂型スポンジ / 下水処理 / 廃棄物利用 / アルカリ供給 / ミネラル供給 / アクアポニックス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、コア技術である下降流懸垂型スポンジ(Down-flow Hanging Sponge: DHS)リアクターのスポンジ担体の一部を、広島県の地域廃棄物である牡蠣殻に置き換えた牡蠣殻DHS(Oyster Shell-DHS: OS-DHS)リアクターによる模擬下水の連続処理実験を実施した。OS-DHSは2段構成とし、上段部分に牡蠣殻、下段部分にポリウレタンスポンジを微生物担体として充填し、無曝気運転をおこなった。実験に用いた模擬下水は、大豆タンパク、廃棄酒、トイレットペーパー、塩化アンモニウムを混合して作成した。OS-DHSの水理学的滞留時間(Hydraulic Retention Time: HRT)を12.5時間から8.3時間まで段階的に短縮させた。 最短HRTの8.3時間で運転した際のOS-DHSの化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand: COD)および生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand: BOD)の除去率はそれぞれ、78.5%および73.3%となっており、良好な有機物除去性能が確認された。牡蠣殻を充填した上段部分では、牡蠣殻表面に生物膜が形成されていることが確認された一方、模擬下水中の浮遊物質(Suspended Solids: SS)も蓄積していたため、下水中の固形分を捕捉する機能も有していることが示唆された。また、OS-DHS処理水中のカルシウム濃度が模擬下水と比較して1.5倍まで増加していたことから、当初の目的通り、下水処理を経由して廃棄物である牡蠣殻の溶解が進んでいることが確認された。OS-DHS処理水のCOD、BOD、SS濃度はそれぞれ64 mg/L、44 mg/L、10 mg/Lとなっており、いずれの項目においても一律排水基準をクリアしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OS-DHSを従来の活性汚泥法のHRTと同等の8.3時間で安定運転可能となり、模擬下水の処理過程において、廃棄物である牡蠣殻が徐々に溶解していることも確認できている。また、牡蠣殻のみ充填したOS-DHS上部において、有機物の約50%が除去されていたことから、牡蠣殻の微生物保持担体としての機能も確認された。一方で、病原性微生物の除去性能や、牡蠣殻表面の微生物解析まではまだ着手できていないことから、2年目に解析を実施する予定としている。また、HRTと牡蠣殻の担体比率についても、当初の目標としていた6時間、2/3の達成を目指す。 2年目に実施予定としていたアクアポニックスについても、同時並行で予備実験を開始しており、充填する牡蠣殻の形状や、給餌量に対する牡蠣殻の充填量、運転に適した植物種についての知見を蓄積している。下水処理とアクアポニックスの両実験結果より、牡蠣殻の溶解については、アンモニア酸化が大きく寄与していることが明らかとなってきたため、下水処理におけるアンモニア酸化を促進させるため、OS-DHSの上・下段共に、アンモニア酸化性能の高いスポンジ担体の下部に牡蠣殻を充填させる形式が有効であることが推察された。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究のメインはアクアポニックスとなるが、初年度に実施した下水処理も継続する。下水処理のOS-DHSでは、担体の充填方法を上・下段共にスポンジ担体下部に牡蠣殻を充填する形に変更する。また、実下水の入手が可能となったため、供試廃水を実下水に変更した上で、HRTを6時間まで短縮した条件下での安定運転の達成を目指す。初年度の模擬下水では、原水中に病原性微生物がほとんど検出されなかったことから、実下水に切り替えることで病原性微生物の除去性能の評価も実施することとする。 アクアポニックスの研究では、初年度に実施した予備実験時に提案した、給餌中の窒素量に対する牡蠣殻の充填量を示す牡蠣殻-窒素負荷という指標を元に、最適な牡蠣殻充填量の決定をおこなう。また、牡蠣殻を破砕することでアルカリ度の供給効果が促進されることも明らかとなったため、アクアポニックスの研究では、破砕した牡蠣殻を充填して実施することとする。 最終年度では下水処理水をアクアポニックスに供給する形となるため、安定した養殖を維持するためには、アンモニアと病原性微生物に着目する必要がある。特に、下水処理部分でのアンモニアおよび病原性微生物の除去性能が重要となってくるため、下水処理水の水質に応じて、後段処理の設置や消毒等の組み合わせも検討することとする。
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Causes of Carryover |
今年度実施した下水処理の実験を次年度も継続することで、当初の予定よりも次年度の水質分析項目が増えたことと、微生物解析を次年度実施に変更したことで、それらに必要な費用を繰り越すこととした。
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