2023 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of an in-situ measurement method for sound absorption characteristics of materials at post-pandemic decade
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23K04143
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大鶴 徹 大分大学, 理工学部, 客員教授 (30152193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 則子 大分大学, 理工学部, 准教授 (00452912)
富来 礼次 大分大学, 理工学部, 教授 (20420648)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 建築音響 / 吸音率 / 粒子速度 / 現場測定 / 表面インピーダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍を経たポストパンデミックの世界では建築音響の現場測定の重要性が高まっている。今年度は研究の当初として代表者らが開発してきたアンサンブル平均を利用する材の吸音特性の測定法(以下、EA法と略す)のロバスト性の実証と、現場における実用的な測定方法の明示を目指し、以下の検討を実施した。 既往の研究を踏まえ代表者らは、2マイクロホンを用いるEA法(EApp法)はPUセンサを用いるEA法(EApu法)に比べ現場での適応性がより高いものと予想している。そこで、EApp法に関する従来の研究において、コンデンサー型に限定して使用してきたマイクロホンを、騒音測定など現場で広く用いられるエレクトレット型に替えた実験を行い、マイクロホン位置交換による現場校正法の効果、測定伝達関数(インピーダンス値)へ加える平均操作など後処理の効果、および、現場測定時の背景雑音とのSN比を明示した。 続いて、2023年のISO 10534-2改定に伴い追記された材の局所作用性に関する留意事項を踏まえ、EA法の測定値が入射角の生起確率分布に関する平均的な値を与えている点などを確認した。さらに、試行的に実施した人工芝を対象とするEApp法、並びに、EApu 法の測定結果をもとに、EA法における平均操作について基礎的な検討を加え、これら2種の手法で得られた吸音率が250Hzから1kHzの周波数域で概ね近似の値となること、表面インピーダンスについては250Hzから2.8kHzの周波数域で実部・虚部ともに概ね一致することなどを明らかにした。なお、実験において測定値に不安定性が生じ検証を行った結果、PUセンサの校正用に作製した音響管の一部に金属疲労が認められたが、応急的な措置を図ることで研究推進への大きな影響は及んでいない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PUセンサの校正用音響管の一部に金属疲労が生じ測定値の不安定さが認められ、その対応にやや時間を要したが、応急措置を施すとともに過去に蓄積したデータの活用を図った。その結果、査読付き国際会議論文1編をはじめ4編の論文、権威ある内外学会における研究発表5件(うち、招待講演1件/うち国際学会2件)を果たし、関連研究分野の国際動向を収集するとともに、現時点で2年度目の国際学会論文1編の採択・現地発表が確定していることから、進捗状況は概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を踏まえ、初年度で応急的な対応を図ったPUセンサ校正用音響管について、耐久性など現場測定に適するよう補修、若しくは、改良型の製作など対策を講じる。騒音や気流など外乱が避けがたい現場での使用という観点から、EApu法はEApp法に比べ適用性で劣るものの、実験室などでは原理的により高精度が期待できるため得られた吸音特性の検証に不可欠である。そのため、これを優先的に実施する。 あわせて、多孔質材以外の共鳴器型や板振動型の吸音材に対する適用可能性について、蓄積された実験データの整理・活用を図り、必要に応じEApp法、ならびに、EApu法による測定を行う。大分大学講義室や大分大学実物模型のコンクリート造、木造住宅居室などin-situ測定を中心とし、必要に応じ大分大学情報基盤センターの残響室や無響室における測定や管内法による測定を実施する。共鳴器型や板振動型吸音材については、位置や境界条件によって音圧や粒子速度が大きく変化することが知られているため、Morse&Ingardなど既往の諸研究を参考に、建築音響での活用を目標とする吸音特性の現場測定手法の明示を企図している。 理論解析では、EApu法の確率モデルの拡充、並びに、EApp法の数理モデルの整備を行い数値解析での検証、実験結果との照合などを行う。その際、まずグラスウールなど均質な材について局所作用性の有無に関する検討を実施し、順次、材特性に確率分布を与えたモデルへと展開していく。ここでは、有限要素法や境界要素法など数値シミュレーションによるパラメタリックスタディを実施し、最終年度へ向けEA法のロバスト性の根拠と適用範囲を明らかにしていく計画である。 得られた成果は、8月にフランスで開催されるInternoise(論文採択済み)や日本音響学会、日本建築学会など権威ある内外学会において公表する。
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Causes of Carryover |
海外滞在費の高騰と円安が進行しているため、2024年8月にフランスで開催される国際学会への現地参加に備え節約を行なった。現時点で論文採択が確定しており、研究計画に沿った現地発表を準備している。
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