2023 Fiscal Year Research-status Report
生業と集落の空間再生を考慮した豪雨災害復興における課題解明と事前復興計画への提言
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23K04175
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
浅井 秀子 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (10331810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠部 裕 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 教授 (10196412)
小椋 弘佳 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50581732)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 西日本豪雨災害 / 事前復興計画 / 生業の復興 / 集落の空間再生 / 空き家整備手法 / 農山村地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、事前調査(広島市呉市、岡山県倉敷市真備町、愛媛県西予市・宇和島市)による西日本豪雨災害の被災地のうち、詳細な調査を行う地域(広島県呉市、愛媛県宇和島市)を選定し、自治体及び被災住民を対象に聞き取り調査及びアンケート調査を行った。 1.広島県呉市での調査:対象地は、広島県呉市安浦町市原集落とする。文献調査をもとに、自治体担当者及び市原集落の住民を対象にヒアリング調査を行い、被災状況の全体概要を補足する。市原集落の豪雨災害による被害の状況と復興計画の内容を調査した結果、市原集落では災害復旧事業により原形復旧可能な農地もあった。その一方で原形復旧が不適当な農地も多数あったため、これらを含めた農地整備は土地改良事業として行われた。豪雨災害による精神的・経済的な大きなダメージに加え、住民の高齢化という厳しい条件の下での、土地改良事業の実施は一般的にみて極めて困難なものと思われる。 2.愛媛県宇和島市での被災者への聞き取り調査:対象地は、愛媛県宇和島市吉田地区とする。対象者は行政職員により抽出された6名で、そのうちの2名はみかん生産者で、被災以降も耕作地を増やして生業を続けている。調査日は、令和5年12月19日及び令和6年3月21日である。被災者への聞き取り項目は、被災時の建物状況及び生活への影響、今後の予定、公的支援の課題、有効な生活支援策である。水害における公的支援の課題点は、被災判定の基準や支給額の見直し、情報提供の方法や速度等が挙げられた。有効な生活支援対策は、炊き出しや救援物資、義援金等の物質的支援であった。生業(みかん生産)は、安定収入を確保するまでに10年程度かかるといわれている。そのためインフラ整備完了後からの生業再建となるため、生活再建と生業再建との同時並行が難しく、支援制度の申請期間の見直し等、災害に即した対応が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、全国の都道府県の自治体及び過去20年間に風水害被害のあった自治体(市区町村)を対象に、過去の被災状況や事前復興計画の実施状況についてのアンケート調査を2024年1月に予定していたが、同時期の能登半島地震発生のため調査の延期を行ったため
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Strategy for Future Research Activity |
1)全国の都道府県の自治体及び過去20年間に風水害被害のあった自治体(市区町村)を対象に実施する事前復興計画に関するアンケート調査の実施及びデータ整理・分析を行う。 2)愛媛県宇和島市吉田地区での住民を対象とした生活再建についてのアンケート調査の実施及びデータ整理・分析を行う。 3)広島県呉市を中心とした空き家の利活用及び解体除却後の跡地利用について、現状と課題、今後の方向性について調査を行う。 4)復興事業が終了した被災地(平成27年9月関東・東北豪雨、九州北部豪雨等)を中心に自治体への聞き取り調査を実施し、現行の復興整備手法のデータ整理・分析を行う。
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Causes of Carryover |
復興事業が終了した被災自治体への聞き取り調査と全国を対象としたアンケート調査が能登半島地震発生のため延期したため、残額が発生した。聞き取り調査等は次年度に実施する。
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