2023 Fiscal Year Research-status Report
保育施設の環境づくりにおける運動の基礎となる動作の評価方法の開発と検証
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23K04191
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西本 雅人 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (10710816)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 子ども / 保育者 / 動作 / 評価方法 / 体力テスト / 基礎運動能力 / 遊び環境 / 活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
保育施設で遊びから体力向上を促すための研究を行っています。体力向上のためには運動の基礎となる動作を幅広く行っていく必要がありますが、それらの動作をどのように遊びに取り入れていくかの方法がなく、動作の考え方が保育の現場に普及していないことが課題です。そこで本研究では保育者が運動に関わる動作を遊びに取り入れるための、動作評価方法を開発して実用化に向けて検証することを目的としています。初年度の2024年には下記の4つの成果を挙げることができました。①、②は福井大学大学院の修士論文として発表し、中でも①は日本建築学会学術講演梗概集(関東)で2024年8月に発表予定です。③、④は日本建築学会北陸支部大会で2024年7月に発表予定です。 ①身体活動量からみる遊び場所の環境―動作の評価モデル:動作の活動量を調べるために、のべ25人の追跡調査を行い、1分ごとの活動量と動作、遊び場所を把握しました。その結果、「歩く、滑る、跳ぶ、登る、こぐ、蹴る」の動作は活動量が高いことがわかりました。その他にも多角的に分析を行い、活動量という視点から動作を評価するモデルを提示しました。 ②場所に影響を受けやすい動作:遊び場所からどの動作を促すかを考えるにあたり、10分おきにビデオ撮影を行い、園全体の動作や遊び場所の把握を行いました。2園で10回の調査を行い、「特定の場所にしか見られない動作」や「どこにでも見られる動作」を明らかにしました。 ③体力テストの結果を用いた成長曲線の作成(動作評価モデル1):研究室の蓄積した体力テストのデータを用いて6種目の成長曲線と、全国平均値との比較を示したチャート図のモデルを開発しました。 ④観察調査の結果を用いた動作割合のシミュレーション(動作評価モデル2):観察調査の結果を詳細に分析することで、遊び場所を入力するだけで想定される動作の割合を把握できるようなシステムを開発しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は2つの方法で研究を進めています。2023年度中に「A園舎での動作の観察と評価、体力テスト」を行い、2024-2025年度中に「B保育施設の動作の評価方法の開発と検証」を行う計画を立てています。現在までの進捗状況として、研究Aのデータ収集は予定通り実施完了し、研究Bの評価方法の検討まで着手しています。そのため、当初の計画以上に進展しているとしました。 A園舎での動作の観察と評価、体力テスト:調査対象施設として、近年建て替えられた園舎とその姉妹園の2園を選定しました。今年度は園児の追跡調査をのべ25人分、体力テストを3歳児以上の全員を対象に実施してきました。前年度には建て替え前の園舎での調査もしており、旧園舎と新園舎、そして姉妹園で合計して10 回分の巡回観察調査(10分間おきに撮影)のデータも分析しました。その結果、実績報告で示した①と②の結果を挙げることができ、日本建築学会にて成果を発表予定です。 B保育施設の動作の評価方法の開発と検証:園での観察調査・体力テストなどの園児の動作のデータを取得後は、動作の評価方法の開発と検証を行います。評価方法は体力テストを用 いるものと遊びの観察をベースにするものという2つの方法を想定しており、すでにそのシミュレーションの概要は開発することができました。実績報告で示した③と④の結果がこのシミュレーションのことであり、日本建築学会にて成果を発表予定です。2024年度の前半でこのシミュレーションの精度や使用方法の検討を行い、9月の調査にて保育士とのワークショップを実施して、提案した方法が保育士にとってわかりやすいものかを検証します。
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Strategy for Future Research Activity |
A園舎での動作の観察と評価、体力テスト:シミュレーションを組み立てるための基礎的なデータ収集は完了したが、来年度以降も引き続き、データ収集を行なっていき、今後の動作評価手法の精度向上に利用していく予定です。 B保育施設の動作の評価方法の開発と検証:観察を行った園にて開発した2つの評価方法を実際に保育者に使ってもらい、その実用性を検証していきます。検証は5段階で使いやすさを評価してもらう他、使いにくい点をワークショップ形式で意見を収集する。改良した評価方法を用いて再度検証を行なっていきます。2つの評価方法のうち、保育者が「使いやすい」と判断した方を実用化していく予定です。9月に保育者に実際に使用してもらうワークショップを予定しています。 実用化の目処が立った段階で動作の評価方法を冊子にして保育施設に配布することも考えております。同時にホームページで公開や冊子PDFをダウンロードできるようにしていきます。また、保育施設の研究者や設計者が使えるようにこども環境学会や日本建築学会で成果を論文として発表していきます。 本研究では独自の試みとして、集計作業の効率化を目指すためBIMを用いた集計を導入しています。BIMに搭載されている積算ツールを用いることで色分けした園児のプロット情報をエクセルに変換するプログラムを構成しました。今回の調査で導入した結果、大幅な入力の時間短縮が行えました。この集計方法は今後、ホームページや論文などで公開して、同じように観察データの集計に苦労している同分野の研究者を支援する予定です。
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Causes of Carryover |
概ね予定通り使用したが、2023年度の調査報告の旅費用として確保していた金額が次年度に繰り越しになりました。
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