2023 Fiscal Year Research-status Report
立石清重関係資料を用いた地方における「大工」の近代化と建築活動の実態解明
Project/Area Number |
23K04207
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
梅干野 成央 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (70377646)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 大工 / 近代化 / 擬洋風建築 / 建築史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地方で擬洋風建築を手掛けた「大工」の代表的な人物である、国宝の旧開智学校校舎をたてた立石清重に着目し、資料をもとに立石が関わった施設の建設体制と、その建設体制における立石の立場を把握し、建築活動の具体像を明らかにするものである。具体的には、立石清重関係資料を整理・解読し、これと地域、県、国といった様々な建設主体にのこる資料とを照らし合わせ、立石の建築活動の具体像を明らかにする。その際、とくに国や県の技術者との関係、さらには他の大工との関係に注目し、各建設体制における立石の立場を明示する。 令和5年度には、立石清重関係資料の整理を行うとともに、建設体制を把握する対象とする施設の絞り込みを行った。これによって、次年度以降に進める研究の前提を構築することができた。対象とする施設に対する理解を深めるため、現存するものについては実地調査(建物の写真撮影や実測調査)を行った。全ての対象について実地調査を行うことができなかったため、今後も継続して進める予定である。 また、立石清重関係資料を精査するなかで発見した年始状宛名控について、内容を把握するとともに、ここに記録されていた人物を特定する作業を通じ、史料の性格を考察した。この史料は明治20年代前半に作成されたもので、ここに記録されている人物は、立石の当時の重要な仕事相手であったと推定される。行政関係や学校関係の職員が多くをしめ、国や県の技術者など、さまざまな立場の人物を含んでいた。今後、他の史料と照らし合わせることで、こうした仕事相手との関係性を具体的に把握することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り調査研究を進めることができており、令和5年度に予定していた内容はおおむね完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度には、地域資料・県行政文書・各省庁行政文書の資料調査を行い、立石清重関係資料との照らし合わせによって、令和5年度に絞り込んだ対象(施設)の建設体制を具体的に把握する。その後には、この作業を継続するとともに、これらの建設体制における立石の立場を明示する。これをふまえ、把握した全ての建築活動を重ねて立体的に解釈するとともに、これを通時的に捉え「大工」の近代化を論じる。 以上の内容については、成果がまとまり次第、研究論文として公表する予定である。
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Causes of Carryover |
実地調査(建物の写真撮影や実測調査)の実施状況によって次年度使用額が生じた。実地調査は次年度にも行う予定であり、次年度使用額はその旅費等にあてる予定である。
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