2023 Fiscal Year Research-status Report
Reverse Engineering of the Crystal Palace/Establishment of Engineering Analysis Methods in Construction History
Project/Area Number |
23K04209
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小見山 陽介 京都大学, 工学研究科, 講師 (40815833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 俊明 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (60816057)
木村 智 立命館大学, 理工学部, 講師 (60846806)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | クリスタル・パレス / リバースエンジニアリング / 構法史 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄とガラスという近代建築材料を大々的に使用し、後世の建築家たちの空間デザインに大きな影響を与えたクリスタル・パレスは、その建設過程においても先進的で合理的なアプローチがとられたと一般的には信じられている。しかしその設計・建設においては、多くの非合理的とも思える選択もまたなされた。またそれは、クリスタル・パレスと同時代に建てられた他の類似建築とを比較することによってより明確に指摘することができる。このようにクリスタル・パレス建設における材料選定・工法選定において、「合理的」な説明がつきづらい部分、あるいは当時の記述では自明のことあるいは明快な理由があることと説明されているもののその「合理性」が現代の目から見ると疑義を挟む余地があるような部分について、当時の設計者がどのような意図でその選択をおこなったのかを建築構法史的観点から検証することが本研究の目的である。 本研究で挙げる検討課題のひとつは、複数の建築材料が使い分けられた「梁」部材等における材料選択意図とその妥当性の検証である。例えば、鋳鉄・錬鉄・木材の3種類の材料が使い分けられていた大梁においては、研究代表者のこれまでの研究から、材料使用効率を高めるために3次元的に変化する断面が採用された主要な大梁では鋳鉄が、スパン長が長い箇所では錬鉄の組み立てトラスが、荷重負担が小さい箇所では木製の大梁が、それぞれ採用されたことがわかっている。しかし、設計者は果たして、建物構造全体の応力状態を正しく把握した上で部材の選定をしていたのだろうか。今年度は、断片的に残る当時の構造設計的視点からの記述の分析結果と、構造モデル化したクリスタル・パレスの構造シミュレーション結果とを照らし合わせることで、両者の間にズレがあるズレと、それが示唆するものを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って研究を進めることができ、その成果の一部は査読付き論文としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で挙げる検討課題のひとつである、材料が鉄であるにも関わらず木造あるいは石造由来の接合方法が転用された柱梁接合部等における工法選択意図とその妥当性の検証を進めていく。例えば、クリスタル・パレスでは柱梁接合部に「込み栓」のような工法が使用された。これは同時期に同じ施工業者によって建設された駅舎では同じ柱梁部材を使用しているにも関わらず接合方法がボルト接合であることと一線を画している。鋳鉄または錬鉄によって組み上げられた同時代(19世紀)の類似建築物(大架構建築物)との実地調査と文献史料による比較分析と、その少し後の時代(20世紀初頭)の類似建築物との実地調査と文献史料による比較分析により、クリスタル・パレスで採用された工法と、同時代及び後の時代の類似建築物との連続性・非連続性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
オンライン会議の活用により定例の研究会議に係る出張旅費が節約されたことから次年度使用額が生じた。繰り越した研究費は来年度に予定している海外現地調査実施のための旅費等に活用する予定である。
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Research Products
(6 results)