2023 Fiscal Year Research-status Report
宇宙開発用太陽電池パネル上に堆積するレゴリスの電界カーテンによる除去
Project/Area Number |
23K04231
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
西村 亮 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (70261683)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 宇宙探索 / 宇宙開発 / 太陽光発電 / 太陽電池 / レゴリス / 電界カーテン / 砂じん除去 / レゴリス除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙探索における電源として太陽電池を用いる場合,月や火星等では受光面に堆積するレゴリス(砂じん)が発電性能を低下させる.宇宙空間という性質上,水や可動部分がある装置でのレゴリス除去は困難である.そこで可動部分を持たず,消費電力が小さい電界カーテンを受光面カバーガラスに埋め込み,進行波電界を発生させてレゴリスを除去する. プリント基板上に三相対称交流電圧を用いる電界カーテンを形成し,その上に透明接着剤で透明ガラス板を接着し,「電界カーテンをもつ太陽電池モジュールの受光面ガラス」を模擬した.その上に月および火星の模擬レゴリスを散布し,大気圧中で電界カーテンを作動させ,レゴリスが電界カーテン上を移動し,除去されることを確認した. 次に宇宙空間の気圧を模擬するための低圧チャンバー内に電界カーテンを設置して大気圧中と同等の実験を行ったところ,大気圧中よりもかなり低い電圧で電界カーテン電極及びチャンバー内の導線同士の結線部から火花放電が発生し,実験の継続が困難となった.これは放電開始電圧が周辺の気圧と電極間隔の影響を受ける「パッシェンの法則」に従い,放電開始電圧が低下したためと考えられる.この不都合を解決するため,真空チャンバー内での導線同士の結線部をなくし,電界カーテンの電極部分の露出を完全にふさぐ方法を現在調査している. また,電界カーテンの動作のためには数kV程度の電圧が必要であるが,通常市販されている高電圧電源は地球上での用途を想定しているため安定な動作及び安全のため良好な接地が要求される.宇宙空間では地球上のように良好な接地が確保できない可能性があるため,無接地で動作できる「フロート高圧電源」を作成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低圧チャンバー内の電界カーテンで発生する異常放電の原因の特定に時間を要した.またその対策を確立する必要があるため,「充分に低い気圧」での実験が行えず,大気圧よりある程度低い気圧でのレゴリス除去実験に留まっている. 一方,第3年目に実施予定の高電圧電源に関する研究を前倒しで実施することができた.当初予定した第1年度の研究の進捗は不十分ではあるが,このことを考慮して「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
電界カーテン電極及びそれを電源と接続するための導体の密封が不十分で,低圧チャンバー内の「低い圧力の空気」に接触してしまうのが異常放電の主な発生原因であると思われる.電界カーテンの作成方法,電界カーテンへの給電方法を改良して充分な密閉を確保する.その後,低圧力条件で電界カーテンによる月レゴリスおよび火星レゴリスの除去実験を行う.
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