2023 Fiscal Year Research-status Report
燃焼速度向上と制御を目指したハイブリッドロケット用液体内包式燃料
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23K04236
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
福地 亜宝郎 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (20857742)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハイブリッドロケット / 燃料後退速度 / 液体内包式燃料 / 燃焼速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
①矩形形状液体内方式燃料の燃焼特性把握:光硬化方式の3Dプリンタを用い、液体を内包するセル形状を変化させた矩形形状の液体内方式燃料を試作し、可視化燃焼室を用いて燃焼特性を取得した。セル形状は燃焼進行方向に深いほど局所燃料後退速度が大きくなること、軸方向長さの影響は微小であることを確認した。また、セル間の隔壁が燃焼時に残存することで全体的な燃焼速度を低下させる要因の一つであることがわかり、ひし形、あるいはハニカムセル形状を適用することで、残存する隔壁を減らせ、燃料後退速度向上に効果がある可能性があることが分かった。 ②円筒形形状液体内方式燃料の試作:矩形形状の試験結果から実際のロケット用燃料を想定した、円筒形形状のサブスケール燃料を設計し試作を行った。円筒形の軸方向に積層することが最適であることを見出した。あわせて、積層条件・製造条件を明確にし、直径70mm、内径20mm、長さ50mmの円筒形燃料の試作に成功した(燃焼試験ではこの燃料2個を接着して試験に供する)。最終的にセル形状は矩形およびひし形とし、深さ9mm×2段および矩形で深さ19mmの燃料を試作し燃焼試験に供した。 ③サブスケールエンジンの試作と燃焼試験:矩形型液体内方式燃料の燃料後退速度取得結果および円筒形燃料の試作結果から、サブスケール形状のエンジンを設計・試作した。素材はSUS材とし、ベークライトの断熱材およびグラファイトのスロートとした。試作した円筒形形状の燃料を用い、目標初期Gox(酸素流束)を40、80㎏/(m^2・s)として燃焼試験を行った。その結果、初期Goxで整理した場合、Wax燃料と同等以上の燃料後退速度が達成できた。特に、セル深さ19mmの燃料の燃料後退速度が大きかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①矩形形状燃料において、セル形状の燃焼速度支配パラメータ(セル深さ,幅,形状,液体充填率,壁面厚さ等)を実験的に調査し、特にセル深さおよび壁面厚さとその流れに対する配向が影響が大きいことを確認できた。 ②サブスケール燃料の試作を行い、製造条件を明確にし、設計方法を確立し、円筒形燃料の試作を行った。あわせてサブスケールエンジンの設計・試作を行い燃焼試験まで実施でき、一連の試験方法を確立した。 ③着火・酸化剤供給の自動化はシーケンス制御を行うことで電磁弁の自動化を達成した。着火条件はニクロム線の加熱(電力出力)および着火剤の塗布方法と塗布量、シーケンスの工夫により、着火条件を明確化でき、確実な着火シーケンスを構築できた。 上記よりおおむねFY2023の研究実施計画に対して、順調に進展していると判断している。 ④新たな課題:液体内方式燃料の内表面で火炎伝播にばらつきがある場合、本方式の特徴である液体燃料供給開始が局所的に遅れることがあり、全体的な燃料後退速度に影響を与えている可能性があることが分かった。このため、このプロセスの把握も重量な課題ととらえ、基本的なハイブリッドロケットにおける着火・火炎伝播の解明を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
①円筒形形状液体内方式燃料の試験結果から、詳細な燃料後退速度解析を行い、燃焼後退速度と酸素流束およびセル形状の影響を詳細に検討する。また、矩形形状および円筒形状における燃焼中の液体供給状況を詳細に観察することで、燃焼中の液体供給の挙動とセル形状パラメータの相関を明確にする。 ②液体内方式燃料の特徴である液体供給において燃焼初期に影響の大きい着火・火炎伝播特性について詳細に知らべ、燃料設計へ反映させる。 ③液体を内包させるセル形状を任意に設計することで燃焼中の燃料後退速度が制御できることを確認する。 ④最終的に酸素流量一定の条件において任意の推力パターンが達成できることを実証する。
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Causes of Carryover |
当該年度は予算に対して99%を使用しており、実際の研究も順調に進捗している。 差異は年度末の試験において、使用額が予算を超過しないようにマージンを持たせた消耗品の一部を使わなかったためである。 このため、次年度以降の研究進捗および使用額についても問題ないと考えている。
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Research Products
(7 results)