2023 Fiscal Year Research-status Report
Cognitive behavioral model of remote ship maneuvering in emergency
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23K04266
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
伊藤 博子 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 海上技術安全研究所, 研究員 (70446590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 園子 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 海上技術安全研究所, 主任研究員 (60757722)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 自動運航船 / オペレーション概念 / 緊急時 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、今後の活用が期待される自動運航船において安全性を確保するため、緊急時対応を考慮した自動化システムや対応設備を整備していくための知見を得て、設計や機能要件の確立を可能とすることを目的としている。 初年度にあたる2023年度は、遠隔型の自動運航船のオペレーション概念の整理を行った。 遠隔型の自動運航船は、船舶と自動化システムの状況監視や問題解決を遠隔で行う。これは、自動化が進み、船内監視が不要になった将来的な運用形態であるため、以降の解析での共通理解として、現状の船内操船と、国内外に公表されている様々な自動化機能の開発状況を参考に、遠隔オペレーション概念(CONOPS; Concept of operations) を構築した。 また、構築したCONOPSに対して、緊急時の定義を検討した。緊急時に至るシナリオ例としては、システムが運用条件から外れて運航管理者に操船が引き継がれ(テイクオーバーされ)、かつ時間的に切迫した場合が挙げられる。様々な自動運航船の設計条件を参考に、逸脱に伴う危険性と時間的切迫性を考慮して、緊急時事象を定義する。これらは、自動運航船に限定しない様々な分野の学術論文、事故データベース、船級ガイドライン等におけるCONOPSと緊急事象に関する文献類を調査した結果をもとに行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オペレーションの概念を記述する方法は、約20年前からIEEEによるソフトウエア中心システムの概念記述法などが作成されているが、自動運航船における記述はまだほとんど見られない。そこで、このようなガイドラインを収集、内容を精査するとともに、関連分野として、航空機の運航、航空管制の運用、ドローンの運航、次世代空路の運用、新規燃料フェリーの運航、工廠船の運航、海難救助の運用など多岐にわたる運用概念の記述を収集し、実際の記述内容を分析することができた。 次に、船舶での緊急時に関する分析を可能とするために、過去の船舶事故調査報告書データおよび船舶事故に関する学術論文等を調査し、船内でこれまでに発生した緊急時およびその際に生じる事象や必要となる作業などの情報を整理した。また、これらが生じた場合に考慮されている対策等を規則やガイドライン類から抽出した。緊急時の事象定義は、次年度以降の認知工学的分析の対象抽出の準備として順調に作成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は認知行動モデルの確立のために必要な情報収集を実施する。引き続き必要な文献調査を行うとともに、必要なデータの収集を行うための実験を計画している。また、これまでに収集した情報を用いて緊急時の認知行動モデルを作成するため、適切なモデル化手法について検討を行う。 まず、抽出した緊急時に対する「緊急時対応」のタスクについて、実験を通して考える。例えば、操船権のテイクオーバーにおいて緊急時となる状況などを想定した模擬遠隔操船環境にて、遠隔監視者が行う操船のタスクや扱う情報を観察し分析する。遠隔操船を行う被験者としては、操船経験が十分にある海技士資格者への依頼を考えている。実験では、主に時間的切迫に影響する要因に着目するが、それらには、提示される情報量、コンソールの操作性、船陸間の通信遅れを含める予定である。実験で観察不可能な内容は、事後インタビューで補う。 次に、実験結果から「緊急時対応を行うためのシステム」のCONOPSを考える。緊急時作業を理解するため、操船者の認知行動をモデル化する。認知行動モデルは、一般に認知、判断、行動が順に作用すると捉えられるが、操船では船舶制御の時定数が大きいことを考慮して、間欠的で同時並行する長時間のサイクルの表現を考える。これに実験データを適用して、所要時間を予測する認知行動プロセスのシミュレーションモデルを構築する。結果を船舶事故調査報告書の行動記録等と照合し、問題点があれば修正する。
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Causes of Carryover |
解析用計算機を購入予定であったが、昨年度実施の内容は所属組織の計算機で対応可能であったため、購入は今年度以降に実施の予定である。また、為替の関係で外国旅費が予定を超過したため、予備実験を中止し、文献調査とした。
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