2023 Fiscal Year Research-status Report
航路予測モデルを軸とした不完全空間情報によるMaaSデータ連携基盤の研究
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23K04297
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
浦上 美佐子 徳山工業高等専門学校, 情報電子工学科, 教授 (30280457)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 航路予測モデル / MaaS / 海上ITS / 離島航路 / データハンドリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではAIS(Automatic Identification System)の通信網を既設の船舶ロケーションシステムとして位置付け,AISデータを用いた初期段階のMaaS参画レベル1である情報統合を目指している.このレベル1は,オープンデータ形式による公共交通機関の連携を前提とした取り組みとなることから,特に各事業者による位置情報共通フォーマットを標準仕様としたデータ化とそれらの品質保証が必要となる.本研究で扱う公共交通標準フォーマットは,陸上の公共交通機関で多くの事業者が取り組んでいるGTFS(General Transit Feed Specification)としている. 一方,簡易AISの仕様では,運航中の位置データ等の送信間隔は,30秒に一回である.つまり,GTFS形式でのMaaS参画レベル1で求められているデータの信頼性基準と同一間隔であるため,これを満たすためには,AIS受信局で100%受信できなければならないが,陸上とは異なる気象・海象の影響を強く受ける環境では難しい.本研究では,不完全な情報となりうるAISデータを用いたGTFS形式でのMaaS参画レベル1での連携基盤についての研究を行う.当該年度は,簡易 AIS 局と周辺海域に存在する AIS 局,陸上 AIS 受信局の通信モデルの試作を行った.また,GTFS対応機能について検討し,試作段階まで進めることができた.そして,通信品質が悪いと判断する基準をモデル化し,機能のプロトタイプを作成した.加えて,過去の研究において構築してきた機械学習アルゴリズムで航海状態を分類する手法を発展させ,航路予測モデルを作成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,簡易 AIS 局と周辺海域に存在する AIS 局,陸上 AIS 受信局の通信モデルを試作し,計算機シミュレーションをおこなうことで,通信利用状態を定量的に示すことができた.また,GTFS対応機能について,検討し,試作することができた.次年度以降,これらの試作をもとに,沿岸域の関係各所へのヒヤリングを実施し,実証実験へつなげていく予定である. また,通信品質が悪いと判断する基準をモデル化し,機能のプロトタイプを作成した.加えて,過去の研究において構築してきたランダムフォレスト,cos 類似度による分類アルゴリズムで航海状態を分類する手法を発展させ,航路予測モデルを作成した.そして,MaaS 参画レベル 1(情報の統合)で AIS データを,既にオープン化されているバスや電車のGTFSデータへと,シームレスに連携させるためのアルゴリズムの検討を開始した.
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Strategy for Future Research Activity |
簡易 AIS,可搬性のある AIS 受信機と開発した処理機能を用いて実証実験を行い,自治体関係者や離島航路の運航管理者や船長の協力を受けて,実運用レベルに改良していく.MaaSで活用するためには,陸上モビリティの場合よりも,海上モビリティは海象・気象の影響を大きく受けるため,通信品質やAIS受信エリアも含めた実証実験を中心に,課題を明らかにすることも重要である.そのため,次年度以降は,実証実験を通じた具体的な課題検討および評価ができるように十分に準備し,実施する. そして,データの取り扱いには十分注意して実施していく.具体的には,データの2次利用に関しては,電子行政オープンデータの著作権等の位置付けが明確化されており,これに準じる.また,本申請研究で利用するAIS通信網は,携帯電話回線網(3G/4G/LTE回線)やLPWA通信網等のような通信機器設置を設置した対象船舶の動的データだけではなく,受信可能な全てのAIS搭載船舶の船位データを含む動的データを取得することができてしまう.このようなAISデータの取扱いについては,既に,グレーゾーン解消制度より,事業に対する規制適応の有無を照会し,有効に活用できることも確認された事例が示されている.しかしながら,個人所有プレジャーボート等のAIS搭載船も存在するため,船舶位置は重要なプライバシー情報になりえることを踏まえ,取り扱いに十分な注意と配慮を行うことも念頭において取り組む.
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Causes of Carryover |
本研究では,計算機を用いたシミュレーション実験・データ解析,およびフィールド調査・実験の両面から実施する. 当該年度において新規購入を想定したAIS受信専用機(アンテナも含めた一式)を,次年度購入に変更したことによるものである.研究を進める中で,AIS受信機の性能だけではなく,期待されるサイズも異なることが分かってきた.航路関係者へのヒヤリングも行いながら機種選定を再確認する中で,当該年度での購入を諦め,次年度購入に変更した.そのため,次年度使用額が生じたが,既設の建屋屋上に設置しているAIS受信機から得られるデータを利用することで,研究への支障を最小限に抑えている.
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