2023 Fiscal Year Research-status Report
近世以前の砂防施設「砂留」の実態調査に基づいた土石流の発生頻度と規模の推定
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23K04347
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
樋口 輝久 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (20304339)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 砂留 / 年代推定 / 福山市 / 歴史的砂防施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
現存する江戸時代以前の砂防施設「砂留」について、その築造・嵩上げ・修復年代を総合的に推定し、災害発生の頻度を明らかするとともに、嵩上げ高もしくは堆積層の深さから各災害における土砂量を算定し、災害の規模を推定することを目的としている。令和5年度は、下記①~③を実施することによって、砂留の築造・嵩上げ・修復年代を総合的に推定した。①砂留の基礎部分の施工に使用されていた木杭や胴木など木質材料や堆積した土砂中から採取した炭化物について放射性炭素年代測定を行い、石積みの施工年代、土砂が堆積した年代を推定する。②周辺地域における災害の発生状況や被災状況ならびに砂留に関する古文書を収集、解読することによって、災害の発生年代、砂留の存在した年代を明らかにする。③砂留の形状、用いられた石材の大きさ、積み方から、おおよその施工年代を推定する。 具体的には、広島県福山市の別所砂留において、①六番砂留の水通し下端部の木杭、左岸下流側の石積みの基礎から採取した木杭、胴木の放射性炭素年代測定を実施した。2本の木杭は年輪数が少なかったが、胴木による放射性炭素年代測定の結果、最外試料年代は1σ暦年代範囲1913-1924年が36.49%、2σ暦年代範囲1908-1928年が42.92%であった。②國頭家の文書から1840年の大雨で別所砂留でも10基の砂留が破損し、修理願いを出していること、1843年の修理記録にも六番砂留が存在しないことが明らかになった。③六番砂留の水通しの形状、使用されている石材の大きさや積み方から、1840年の洪水で被害を受けて修復した七番砂留と八番砂留と共通点が多いことが明らかになった。以上の結果から、六番砂留は1843年以降に築造され、その後、崩壊による修復か孕み出しや陥没による積み直しが、明治期から昭和初期にかけて行われた可能性が高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた、①砂留の基礎部分の施工に使用されていた木杭や胴木など木質材料や堆積した土砂中から採取した炭化物について放射性炭素年代測定を行い、石積みの施工年代、土砂が堆積した年代を推定する。②周辺地域における災害の発生状況や被災状況ならびに砂留に関する古文書を収集、解読することによって、災害の発生年代、砂留の存在した年代を明らかにする。③砂留の形状、用いられた石材の大きさ、積み方から、おおよその施工年代を推定する、が実施できており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
対象とする砂留を拡大し、令和5年度に引き続き、炭化物を採取し、放射性炭素年代測定を実施したうえで、文献調査および現地での石積みの有り様等から年代の推定を行う。、また、別所砂留では、砂留を含めた流域全体の3D点群データを取得しているため、砂留の嵩上げ高や堆積層の厚さをもとに、堆積している各層の土砂量の算定ができるはずである。
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Causes of Carryover |
放射性炭素年代測定が実施できる炭化物が想定よりも少なかったため、残金が発生した。残金は、次年度の放射性炭素年代測定に充てる予定である。
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