2023 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of the glass-forming ability of amorphous alloys with high-Fe content and development to high-performance nanocrystalline soft magnetic alloys
Project/Area Number |
23K04362
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
尾藤 輝夫 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (40315643)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アモルファス合金 / 軟磁性材料 / 材料設計 / 飽和磁化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,混合エンタルピー(ΔHmix),原子半径比に関連するδパラメータと合金のアモルファス形成能(AFA)との関係について,我々が収集したFe-B-C-Si合金のデータ,およびFe-B-Si, Fe-P-C合金の文献データを合わせて検討を行った。その結果,ΔHmix, δとAFAには強い相関があることが確認できた。その一方で,混合エントロピー(ΔSmix),ΔSmixの自由エネルギーへの寄与を表すΩについては,AFAとの明確な相関は確認できなかった。また,熱分析により得られる過冷却液体領域の広さ(ΔTx),ガラス遷移時の比熱の変化(Δcp)については,ΔTxはFe-B-C-Si合金では変化が小さくAFAとの相関は見られないが,ΔcpはAFAと強い相関があることが分かった。しかし,高Fe濃度のFe-B-C-Si合金ではガラス遷移が見られなくなるため,Δcpを材料設計の指標には使用できないことが分かった。 Fe-B-C-Si合金およびFe-B-Si合金のΔHmix, δとAFAとの関係を基に,高Fe濃度で高いAFAを有する合金組成を予測し,これらの厚い試料を作製してAFAを評価した。その結果,78.7~80.8 at% Feの比較的高いFe濃度の範囲で,アモルファス生成の臨界厚さが70 μm以上の高いAFAを有する組成を複数見出した。またこれらの合金は,175~177 Am2/kgの高い質量飽和磁化を示すことを確認した。したがって,ΔHmixとδが高いAFAを有する合金の組成設計に有効であることが明らかとなった。また,Fe-B-C-Si合金ではFe-B-Siよりも高Fe濃度側にAFAの高い組成範囲が広がっていると考えられ,高い飽和磁化を得るために有利な組成であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fe基アモルファス合金のアモルファス形成能が,混合エンタルピー(ΔHmix)と原子半径比に関連するδパラメータで予測でき,材料設計に有効であることを確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果を踏まえ,より高Fe濃度で高いAFAが得られる合金系の探索を行う。まず,文献データが利用でき,かつ高Fe濃度で高いAFAが期待できるFe-P-C合金について検討を行う。十分な成果が得られなかった場合は,遷移金属元素(Zr, Nb, Mo等)や希土類元素(Y等)など,AFAを補う効果が期待できる元素の微量添加に関して,混合エンタルピー(ΔHmix)と原子半径比に関連するδパラメータとの相関について調査する。 更に,合金の正確な密度を測定して体積磁化の値を求め,実用上重要な体積磁化が大きな組成を明らかにする。現状では密度の測定精度が十分ではないため,恒温ブースを導入して装置や試料の温度を安定させるなどの対策を行う。 また次年度のナノ結晶化の検討に向けて,候補となる合金の結晶化過程の基礎的データを収集する。特に初晶としてα-Fe相が析出し,かつα-Fe相と化合物相の析出温度が大きく異なる合金を探索する。また,Fe-B-C-Si合金の熱処理後の結晶粒径の調査や,遷移金属元素(Zr, Nb, Mo等)の微量添加の結晶粒径に対する影響等の調査にも着手する。
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Causes of Carryover |
当初,導入を予定していた磁化特性測定用のバイポーラ電源は,学内の他研究室で不要となったものを借用することができたため,導入を見送った。また試料の密度測定を他研究機関の装置を借用して行う予定であったが,乾式の密度測定装置を学内の予算で購入することができたため,そのために確保していた旅費も不要となった。一方で,アモルファス合金薄帯の密度測定を行ってみた結果,少量の試料で高精度の測定を行うためには課題が多く,未使用予算は密度の測定精度向上のための費用(温度を安定させるための恒温ブースの導入など)に充てる。
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