2023 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of real-time quantitative determination technology for structural metallic materials under extreme environments
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23K04367
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
諸岡 聡 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10534422)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高圧水素ガス / 水素助長延性低下 / 内部応力 / 格子欠陥密度 / 極限環境 / 中空高圧水素試験法 / 中性子回折法 / ステンレス鋼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、試験片の製作、研究用原子炉(JRR-3)に設置された中性子応力測定装置RESAにおける予備測定、極低温環境下における機械試験を行い、機械特性の取得および、中性子線ビームを使って、金属材料に固溶した水素の定量の可能性を模索した。 試験片の製作においては、物質・材料研究機構(NIMS)の協力のもと、高圧水素環境で予め水素ガスチャージした試験片を5水準および、中空高圧水素試験片(素材:SUS316Lおよび、AUS316L-H2)10本を製作した。 定常中性子線ビームを用いた予備測定は、5水準の高圧水素環境で予め水素ガスチャージした試験片に対して中性子回折測定を行った。その結果、回折線の位置から得られる格子面間隔と水素ガス圧の関係は指数関数で近似できることが判明した。すなわち、水素が含有した金属材料に中性子線ビームを照射することで、容易に金属材料中の水素量を定量可能となる。この成果は「水素助長延性低下」メカニズムの解明を進めるにあたり、非常に重要な技術となる。 高圧水素と極低温環境を模擬した極低温環境下における機械試験では、高圧水素環境で予め水素ガスチャージした試験片および、水素ガスチャージなし試験片を用いて、25℃、-80℃、-196℃における機械試験および、デジタルイメージコリレーション(DIC)観察を行った。その結果、種々の温度域における機械特性とその塑性領域における材質変化の連続撮像から、極低温環境下における巨視的な応力変化と局所的なひずみ変化を同時に取得することに成功した。 2024年度はこれらの研究成果をもとにして、中性子応力測定装置RESAに中空高圧水素試験装置を導入し、中性子実験に資する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた実験は概ね着手しており、データも順調に取得することができている。特に、5水準の高圧水素環境で予め水素ガスチャージした試験片から、水素ガスチャージによる格子膨張と水素ガス圧の関係が指数関数で近似できることが判明し、予想外の研究成果が得られた。 ただし、水素は結晶中では点欠陥に分類されるため、回折線の幅変化つまり、格子欠陥密度変化にも影響を及ぼす可能性があり、解析手法が肝となる。この問題を改善することができれば、本研究課題の目的を達することになるが、1年目の研究機関で問題点に着手できた点は評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、主に中性子応力測定装置RESAに中空高圧水素試験装置を導入して、応力・格子欠陥密度の逐次評価を行い、格子欠陥の種類と密度・応力状態を把握する。 ただし、水素は結晶中では点欠陥に分類されるため、回折線の幅変化つまり、格子欠陥密度変化にも影響を及ぼす可能性があり、解析手法が肝となる。 2025年度は、主に工学材料回折装置TAKUMIによるパルス中性子線ビームと低温DICを併用した極限環境下におけるその場測定を用いて、温度・応力状態・格子欠陥の種類と密度・微視組織変化のリアルタイム評価を行い、「水素助長延性低下」メカニズムの解明に繋げる。
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Causes of Carryover |
2023年度の中性子実験において予想外の研究成果がいくつか得られたため、国際会議で当該の賛否を問うことになったため、円安ドル高を考慮して出張旅費(滞在費・宿泊費・交通費・参加費)を多めに検討していた。しかし、実際の支出額が検討結果に比べて、少なくて済んだことから次年度使用額が生じることになった。 次年度使用額は、2024年度の研究費と合わせて、今後の測定手法の波及効果を考えた金属種拡大を図るための素材購入に係る費用として使用する。
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