2023 Fiscal Year Research-status Report
高緻密性薄膜へのイオン照射による高温超伝導材料の最適組織設計
Project/Area Number |
23K04378
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 浩明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50431490)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / 臨界電流 / イオン照射 / 欠陥制御 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類系高温超伝導体(RE123)は、優れた電気輸送特性を示すことから実用化に向けた研究開発が進んでいる。これまでに、同特性を最大化する材料組織を解明するためのイオン照射・欠陥注入実験を進めてきた。当該年度は、はじめに44, 66, 84MeV Au照射試料の高分解能断面電子顕微鏡観察により、これまで明らかになっていなかった数十MeVイオンビームによる欠陥の微細構造を調べた。その結果、同イオンエネルギー帯では1)1次元的に配列した球状欠陥(直径5-10nm)と2)同配列に沿った線状欠陥(直径1-5nm)の2つの欠陥が存在し、イオンエネルギーの増加とともに主成分が前者から後者へと移行することを見出した。この様な移行が電気輸送特性にどう影響するかを調べるため、24,44,55,66,75,84MeV Au照射試料の77K/自己磁場下での臨界電流密度を測定・比較した。その結果、線状欠陥が現れ始めるイオンエネルギーを境に臨界電流密度の最大値が不連続に上昇することを見出した。現在、イオン照射条件をより広範囲かつ高精度とした実験により詳細な機構解明を進めている。 また本研究で合成したRE123薄膜は低磁場で顕著なイオン照射効果を示すことから、これを用いて新しい原理に基づく超伝導ダイオード効果の探索を試みた。具体的には、表面垂直方向に対し30°傾いた1次元欠陥を注入し、この傾斜面と直交する臨界電流を表面垂直磁場中で測定した。その結果、この臨界電流が正負電流方向に対して約3%の非対称性を示すことを見出した。これにより、複雑な微細加工を必要とせず、アライメントが容易な表面垂直磁場でも動作する新しい超伝導ダイオード効果の実証に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで明らかになっていなかった数十MeVイオンビームによる注入欠陥の微細構造の観察に成功し、さらにその臨界電流特性との相関を見出している。また電気輸送特性の最大化から派生して、独自の原理に基づく超伝導ダイオード効果の実証に成功している。これらを土台とした研究の推進により、希土類系高温超伝導薄膜の機能最大化に向けた材料設計指針の提示が視野に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
数十MeVイオンビームによる実験から、希土類系高温超伝導薄膜の臨界電流特性と欠陥微細組織の相関関係の新しい知見が得られてきた。特に、電子阻止能由来の線状欠陥が自己磁場臨界電流に与える効果の大きさとその直径・密度依存性が明らかになりつつある。今後はこれらを基に、イオン照射条件をより広範囲かつ高精度とした実験を進めることでデータの蓄積を進め、電気輸送特性の最大化にとって真に有効な材料組織の特定を目指す。
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Causes of Carryover |
研究の効率化により消耗品費の使用額を想定より抑えることができたことなどで次年度使用額が生じた。一方、今後研究を加速する上で必要な単結晶基板や寒剤をはじめとする数多くの消耗品で値上げが進んでおり、次年度の使用額は当初の想定を上回る可能性が高い。繰越分の充当によって計画からの遅れが出ないよう研究を進めたい。
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