2023 Fiscal Year Research-status Report
Improved Glass Scintillator Characteristics for Neutron Detector
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23K04382
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
村田 貴広 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (70304839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猿倉 信彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (40260202)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ガラス / シンチレータ / 中性子 / フォトニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高速応答性能を誇るPr3+をドープする新規なマトリクスガラスを独自の組成設計指針に基づいて開発し,高速応答性と高輝度を達成でき,高い化学的安定性と放射線耐性を兼ね備えたガラス組成を設計し,中性子イメージング用ガラスシンチレータ材料の開発研究を2つのアプローチで行っている. 本年度は,光学活性を維持したままPr3+を高濃度ドープ可能なガラス組成の開発に取り組んだ.通常,シンチレーション蛍光を担う賦活剤をガラスに高濃度にドープすると,賦活剤が互いに近接あるいはクラスタリングを生じることによって,賦活剤間で吸収したエネルギーの移動が起きることで,失活し発光量が著しく低下する濃度消光が生じる.これに対し,リン酸塩系はガラスネットワークにP=O二重結合を起源とする賦活剤を均一分散・固定化させる site selectivity と呼ばれる特異性を有することを研究代表者が明らかにしている.申請者らが開発した20Al(PO3)3-80LiF (APLF80) ガラスも同様にこの site selectivity が期待できる.そこで,APLF80ガラスをベースに濃度消光することなくPr3+を高濃度にドープできるガラス組成の開発を行った.本年度ではAPLF80ガラスの組成を展開し,フッ素を含まずに安定なガラスを形成できるリン酸塩系ガラスについて調査を行った.比較のために,ケイ酸塩系でも希土類イオンを高濃度に含有することができるガラス組成についても比較検討を行った.ガラスの調製は通常の溶融急冷法で行った.得られたバルクガラスを切削加工・研磨を行って,市販の蛍光分光光度計度で蛍光スペクトルを測定し,ガラス組成がPr3+の深紫外蛍光スペクトル波形に及ぼす効果について検討を行った.その結果,リン酸塩系ガラスに比べ,ケイ酸塩系ガラスにドープしたPr3+では励起および蛍光のピーク波長はともに長波長側にシフトし,励起および蛍光のスペクトル幅はともにひろがることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では,APLF80ガラスをベースに濃度消光することなくPr3+を高濃度にドープできるガラス組成の開発を目的として,APLF80ガラスの組成を展開し,フッ素を含まずに安定なガラスを形成できるリン酸塩系ガラスとともに,ケイ酸塩系でも希土類イオンを高濃度に含有することができるガラス組成を見出すことができたので,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
通常の多くの酸化物ガラスでは,Pr3+の深紫外蛍光波長領域に対する光透過能が低い.さらに,中性子イメージング用シンチレータに求められる必須条件であるLi+高含有組成では,紫外光を強く吸収する非架橋酸素が大量に生成されるので,ガラスの紫外透過能が著しく低下する.従って,Li+を多量に導入しても紫外透過特性を維持するガラス組成の設計が必要となる.本年度で調査したリン酸塩系およびケイ酸塩系にPr3+をドープしたガラスについて,組成を改良し,蛍光寿命および発光量に関する計測を行なって蛍光特性に関する物性値をさらに集積するとともに,シンチレーション特性についても評価を行うべく研究を継続して取り組む計画である.
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりもガラスサンプル調製のための消耗品を効率的に使用できたので次年度使用額が生じた.次年度ではガラス製造用器具を中心に物品費として使用する予定である.
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