2023 Fiscal Year Research-status Report
量子ビームを用いたSiC系ナノ材料の電子構造改質による高機能性触媒材料開発
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23K04387
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (50354832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 春也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (70354941)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 炭化ケイ素(SiC) / ナノチューブ / イオン照射 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、多層カーボンナノチューブとSi粉末とを真空熱処理することで、多結晶炭化ケイ素(SiC)ナノチューブの創製に成功している。さらに、これら多結晶SiCナノチューブを室温にてイオン照射することにより、アモルファスSiCナノチューブを創製できることを明らかにしてきた。本年は、多結晶SiCナノチューブの室温イオン照射における透過型電子顕微鏡(TEM)その場観察及び電子エネルギー損失分光その場測定により、多結晶SiCナノチューブの密度変化に及ぼす照射量依存性を詳細に検討した。その結果、2dpa程度でアモルファスになることが分かったが、これはバルクのSiC材料に比べて2倍以上高い照射量であった。また、バルクのSiC材料の密度は、アモルファス化するまで減少しアモルファス化した後、照射量が増加すると微減かほぼ一定になる。一方で、多結晶SiCナノチューブでは、アモルファス化するまでは密度が減少することは同じだが、アモルファス化した後は、徐々に密度が増加するという全く逆の傾向を示すことを初めて明らかにした。これは、アモルファスSiCナノチューブの密度を照射量により制御することができ、バルクのアモルファスSiC材料の密度に比べて比較的高い密度のアモルファスSiCナノチューブの創製に成功したと言える。 さらに、多結晶SiCナノチューブにN等の他原子イオン注入により、また、溶液中レーザー照射法により、異種原子ドープSiCナノチューブの創製も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多結晶SiCナノチューブのイオン照射による密度変化が、バルクのSiC材料のそれと異なった挙動を示すことを初めて明らかにし、さらに、バルクのアモルファスSiC材料に比べて、比較的高い密度を持つアモルファスSiCナノチューブの創製に成功することができた。そのため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、イオン照射やレーザー照射による新奇構造を有するSiC系ナノ材料の創製や、異種原子ドープもしくは異種原子粒子担持SiC系ナノ材料の創製を試みる。 UPS、反射EELSやXAFS測定等により、創成された新奇構造SiC系ナノ材料の電子構造の評価を行い、さらにそれらの触媒特性評価を合わせて行う予定である。
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Causes of Carryover |
透過型電子顕微鏡(TEM)その場観察実験が予定よりも順調に行われ、さらに良好な結果が得られたために、当初の実験計画よりも試料作製用の原材料を購入する必要がなくなったため。 また、当初雰囲気制御レーザ-照射容器を作製予定であったが、先ずは溶液中でのレーザー照射について検討したため。 次年度は、今年度作製予定であった雰囲気制御レーザー照射用容器を作製する計画である。さらに、試料作製用及びTEM観察用消耗品を購入する予定である。
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