2023 Fiscal Year Research-status Report
同時重合非晶性/結晶性ポリマーブレンドの高次構造形成と力学特性発現機構の解明
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23K04410
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
桑城 志帆 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (40910683)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ポリマーブレンド / 非晶性 / 結晶性 / 高次構造 / 強靭化機構 / PMMA / ポリウレタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、同時重合非晶性/結晶性ポリマーブレンドの高次構造形成プロセスおよび形成された高次構造と力学特性との関係および物性発現機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、メタクリル/ウレタンを同時重合して得られる100nmの相分離構造と数µmの球晶を含む構造が共存するポリマーブレンドを用いて、力学試験中の変形・破壊機構を調べ、強靭化機構を考察した。Single-Edge Notched 3-point Bending試験途中の試験片を光学顕微鏡や電子顕微鏡などを用いて観察したところ、主き裂周辺に数µmの球晶を起点とした複数のクレーズおよび100nm相のキャビテーションとその周辺のマトリックスポリマーの変形が観察された。一般的に、三軸引張(膨張応力)下において、ポアソン比が0.5に近いゴム相はマトリックスポリマーとは異なり体積変化を起こすことができず、ゴム相の赤道周辺に応力集中しボイドと分子鎖の引き延ばし(フィブリル)で構成されるクレーズが発生する。また、ゴム相が膨張応力に耐えきれずキャビテーションし、周辺のマトリックスポリマーがせん断降伏(塑性変形)する。このようなクレーズやせん断降伏の発生が破壊エネルギーを吸収し、ポリマーを強靭化させる。本ポリマーブレンドにおいてき裂が進展する際、数µmの球晶を含む構造の存在により、球晶の赤道周辺に応力集中が生じマトリックスポリマーにクレーズが発生したことが考えられる。加えて、100nm相は膨張応力に耐え切れず破壊しキャビテーションしたために周辺のマトリックスポリマーがせん断降伏したと推測できる。これらの強靭化機構が相乗的に働いたために本ポリマーブレンドは強靭化されたと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非晶性/結晶性ポリマーブレンドであるメタクリル/ウレタンポリマーブレンドに形成された高次構造と強靭化機構を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
同時重合により得られるメタクリル/ウレタンポリマーブレンドを用いて、構成要素を変更せず重合プロセスのみの操作により高次構造を制御し、その形成メカニズムを明らかにする。また、重合プロセスの操作によって形成された高次構造と強靭化機構を結びつけて考察する。
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Causes of Carryover |
当該年度に開催予定であった国際学会が延期されたため。
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Research Products
(5 results)