2023 Fiscal Year Research-status Report
極低温加工と低温焼もどしによる加工誘起マルテンサイトの多機能化
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23K04423
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
土田 紀之 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90382259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 裕貴 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (40710132)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 鉄鋼材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,高強度マルテンサイト鋼の機械的特性におよぼす予ひずみの影響を、ストレイン・テンパリング材と,焼入れ・焼もどし材の2種類の試料を用いて調査を行った.ここで,ストレイン・テンパリングとは,焼入れしたマルテンサイト鋼に,数%以下の予ひずみを加え,低温で焼もどし処理を行うことである. ここでは,炭素量が0.4%の鉄鋼材料を用いて,焼入れ処理後に,室温にて0.5%予ひずみを加えたサンプルを473Kで焼もどし処理を行った.このサンプルより引張試験片を作製し,試験温度を室温から573Kまで変化させて引張試験を行った.室温以上で引張試験を行った理由は,引張変形中にセメンタイトが析出する可能性を調査したためである. 296から573Kの変形温度での引張試験において,ストレイン・テンパリングしたサンプルは473から523Kで引張強さと均一伸びの両方が増加したのに対し,焼入れ・焼もどしのサンプルは引張強さと降伏強さはほとんど変化せずに,均一伸びの増加を示した.これらのサンプルについては,J-PARCのビームラインTAKUMIを用いて,引張変形中のその場中性子回折実験を行った.その結果,変形温度が296Kから523Kに上昇するにつれて,bcc相への応力分配が増加することがわかった.この時,セメンタイト相のピークはわずかであり,強度の定量解析は困難であった.焼入れたサンプルに加えた0.5%の予ひずみは,わずかな加工硬化を伴って296Kでの降伏強さを増加させた.この時,プロファイル解析により転位密度を算出した.初期の転位密度は523Kで減少したが,その値は降伏後に著しく増加し,引張強さと均一伸びのより良い組み合わせにつながった.さらに,マルテンサイト鋼の変形前の転位密度の変化と降伏後の転位密度の増加は,予ひずみ温度,焼もどし温度,変形温度の組み合わせによって大きく変化した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は,焼入れマルテンサイト鋼に関する研究に主眼を置き,加工誘起マルテンサイト鋼の予ひずみ加工については,予備実験までで終わってしまった.一方で,2023年度の成果も重要な位置づけとなるため,2024年度は研究を加速できるように進める.
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Strategy for Future Research Activity |
次の実験計画は立てられており,実験も順調に進められている.2024年度は,特に,機械的特性の変化に注目し,実験を進めていく.
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