2023 Fiscal Year Research-status Report
Correlation between electronic structure and corrosion resistance of passive film of H-charged stainless steel
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23K04434
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
多田 英司 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (40302260)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 孔食電位 / 水素 / 局部腐食 / 半導体的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属材料に水素が侵入したときに生じる水素脆化の研究が活発になされているが,そもそも金属内に吸収された水素によって金属材料の耐環境性能が変化するのであろうか?本研究は,金属材料の耐環境性能(耐食性)にとって重要な役割をしている”不動態皮膜”に着目し,金属材料中の固溶水素が不動態皮膜の構造や電子構造にどのように影響するのか,それによって耐食性がどのように変化するのかを解明する. そこで,本年度は,水素を固溶したステンレス鋼について,塩化ナトリウム水溶液中のアノード分極曲線測定から不働態保持電流,孔食電位を取得し,不働態皮膜の耐食性評価を行った.その結果,異なる時間で水素チャージした304ステンレス鋼に対する浸漬1h後の腐食電位は,水素チャージ時間の増加に対して徐々に卑な電位に変化した.水素チャージによって,腐食電位が若干卑化するものの,水素チャージ後のステンレス鋼の腐食電位はいずれも不動態域にあることがわかった.また,水素チャージありおよびなしの304ステンレス鋼のアノード分極挙動から,水素チャージしていないものは,約0.3 V (SSE) 付近から再不動態化性の孔食の発生と死滅を示す電流スパイクが見られ,さらに0.4 V付近から成長性の孔食発生による電流増加が生じたが,水素チャージしたものについては,不動態保持電流は,水素チャージしていないものに比べて全体的に大きくなり,孔食成長にともなう電流増加もより卑な電位で観察された.以上から,水素チャージによって,不動態皮膜の化学的な安定性が低下し,孔食発生が促進されたといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究課題としてあげた,水素を固溶したステンレス鋼の電気化学反応特性・耐食性評価について,順調に研究が進展し,本年度想定した結果をおおよそ取得することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
水素を固溶したステンレス鋼の水素吸収量と水素存在状態解析および不働態皮膜の構造および電子構造評価を実施し,ステンレス鋼の耐食性に及ぼす固溶水素の影響解明を行う.
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Causes of Carryover |
本研究課題の目的達成のために設定した研究テーマに対して,当初予定していた研究テーマの実施順序を代えて,本年度に研究テーマを実施したため経費支出に差異が生じた.次年度の研究テーマを遂行することによって,予定通り経費支出ができる予定である.
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