2023 Fiscal Year Research-status Report
高温その場観察による耐熱金属材料の水蒸気酸化挙動に及ぼす水素の影響の明確化
Project/Area Number |
23K04446
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 光敏 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (90376939)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高温その場観察 / 耐熱金属材料 / 高温酸化挙動 / 水素透過 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,水素が透過する環境下における耐熱金属材料の酸化挙動を高温その場観察し,酸化挙動に及ぼす水素の影響を実験的に明らかにするとともに,水蒸気酸化における劣化の支配因子を明確にすることを目的としている.今年度は,顕微鏡に実装可能な試験片を用いて,水素が透過する環境下における耐熱金属材料の酸化実験を再現するため実験的手法の確立を目指した.供試材を高Crフェライト鋼のモデル合金であるFe-9mass%Cr合金(Fe-9Cr合金)とし,あらかじめ水素を吸蔵させた水素吸蔵金属を試験片の内部に入れて封止し,内部に水素吸蔵金属を組み込んだ酸化試験片を作製した.この酸化試験片を,内部に水素吸蔵金属を組み込んでいない通常の酸化試験片と共に,923 K(650℃)にて最長1.8 ks(30分)大気酸化させ,合金の高温酸化挙動に及ぼす透過水素の影響を実験的に確認した.その結果,内部に水素吸蔵金属を組み込んだ酸化試験片において,加速酸化が確認された.内部に水素吸蔵金属を組み込んでいない酸化試験片の表面には,保護性酸化皮膜が生成していたのに対し,内部に水素吸蔵合金を組み込んだ酸化試験片の表面には,鉄系酸化物を含む酸化皮膜が生成しており,合金の酸化挙動が酸化試験片の内部から透過した水素の影響を受けていた.以上の実験的検討を含め,今年度に確立した実験的手法を用いることで,水素が透過する環境下における耐熱合金の酸化実験を,顕微鏡に実装可能な試験片を用いて実施できるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顕微鏡に実装可能で,内部に水素吸蔵金属を組み込んだ酸化試験片を用いて,合金の酸化挙動に及ぼす透過水素の影響を実験的に観察する手法を確立することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立した実験的手法を用いて,水素が透過する環境下におけるFe-9Cr合金の高温酸化実験を行い,酸化皮膜の生成過程をその場観察する.また,内部に水素吸蔵金属を組み込んでいない酸化試験片を用いた高温水蒸気酸化実験も並行して行う.各条件において得られた高温その場観察の動画等を詳細に解析し,合金の酸化挙動に及ぼす透過水素の影響を実験的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
内部に水素吸蔵金属を組み込んだ酸化試験片の作製が,比較的簡単な方法で実現できたため,作製にかかる費用が当初よりも安価になった.次年度以降,部品の精密加工や量産など,酸化試験片を迅速に作製するための物品の購入費や材料の加工費等に充てる.また,本格的に高温その場観察を行うための実験装置の整備等(水蒸気酸化試験装置を作製するための物品の購入費等)にも充てる.
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