2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of fabrication technique for high-performance hyper-eutectic casting Al-Si alloys using in-situ generated AlN
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23K04458
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
水本 将之 岩手大学, 理工学部, 教授 (90325671)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 初晶Si微細化 / 過共晶Al-Si合金 / 異質核 / 溶湯窒化法 / AlN |
Outline of Annual Research Achievements |
過共晶Al-Si合金は,比強度や耐摩耗性に優れ,熱膨張係数が小さいなどの特性を活かして,自動車のエンジンの高温部材やエアコンプレッサーなどの摺動部材に広く利用されており,自動車の電動化に伴う軽量化への要求から,その需要は高まることが予測されている.しかし,この合金は凝固時に粗大な初晶Siが晶出すると,機械的性質が低下するという問題がある.そこで,過共晶Al-Si合金溶湯に細孔を持つノズルを使って高純度窒素ガスでバブリング処理を行うことで,溶湯中にAlNをその場生成し,生成したAlNを初晶Siの晶出核とする技術を提案している.実験では,溶湯温度やガス流量の実験条件が生成物の形態に影響を及ぼすことがわかった.溶湯温度が850℃でバブリング処理した場合には,微細な初晶Siの内部には主に粒状の介在物が観察された一方で,800℃で処理した場合には粗大な初晶Siや共晶Siに隣接して主に皮膜状の介在物が観察された.このことから,溶湯温度によって生成物の形状が変化することを示唆された.また,ガス流量が0.5 L/minの試料では,1.0 L/minの試料と比較して観察された介在物の数が少なかった.さらに,介在物を元素分析した結果,皮膜状の介在物では一部でNとAlの分布が一致したが,主に酸化物であることがわかった.粒状の介在物では,NとAlの分布が一致しており,特に初晶Siの中心に観察された粒状介在物では,NとAlの分布が一致していたことから,バブリング処理によってその場生成されたAlNが初晶Siの異質核として機能した可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AlNの生成条件および生成するAlNの形態に及ぼす溶湯温度やガス流量の影響について,おおよその傾向を把握することができた.また,生成物の形態と晶出する初晶および共晶Siとの位置関係についても調査することができ,得られた結果から,粒状の生成物は初晶Siの晶出核として有効に機能するが,皮膜状の生成物は初晶および共晶Siの晶出に影響を及ぼさないことが分かった.これらの結果から,今後の研究において,より大量のAlNを生成させることによる過共晶Al-Si合金の組織制御のための溶湯処理条件に関する重要な知見を得ることができたため,令和6年度に予定している特殊溶湯処理装置を導入した実験を,これらの知見を元に行うことができる見通しを立てることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は,AlNを効率的にその場生成させ,これまでの研究で問題となっていた溶湯中における粗大な初晶Siの成長を抑制しつつ,微細な粒子状の生成物を溶湯中に均一分散させることができる特殊な溶湯処理装置の設計について,製造業者との打ち合わせに長時間を要し,令和5年度中に導入することができなかった.そのため,令和6年度は令和5年度に得られた知見を盛り込んで設計した特殊溶湯処理装置を導入して実験を行い,より大容量の過共晶Al-Si合金溶湯を用いることで,AlNの生成の効率化と形態の制御,および過共晶Al-Si合金の組織に及ぼす影響について,より詳細に調べると共にデータのさらなる蓄積を行う. また,初晶Siの晶出核として機能したとみられる生成物についてTEMを用いて生成物/初晶Si界面を観察し,生成物の構造および初晶Siと生成物の結晶学的関係について明らかにする.
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Causes of Carryover |
令和5年度前半を目途に,高純度窒素ガスによる溶湯処理が可能な実験器具を製造業者と共同で開発する予定であったが,高温・長時間の動作に耐える装置の機構について,耐熱性の検討および実験環境に合わせた機器の設計に時間を要したため,令和5年度中に導入することができなかった.そのため,令和5年度の装置導入に使用する予定であった経費の一部を次年度に繰り越すことで,令和6年度の導入に備えることにした.そこで,令和5年度に得られた知見を新たに盛り込むことで,溶湯温度の低下を最小限に抑制し,微細な粒子状のAlNを効率的にその場生成させ,溶湯中に均一分散させることができる溶湯処理装置について,製造業者と打ち合わせを重ねて設計することができたので,令和6年度7月中を目途に装置を導入することを予定している.
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