2023 Fiscal Year Research-status Report
Interfacial Science of Solid Electrolytes with Different Charge Carriers and Hybrid Water Vapor Sensor with High Temperature Operation
Project/Area Number |
23K04460
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗田 典明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242901)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | プロトン伝導体 / 安定化ジルコニア / ストロンチウムジルコネート / カルシウムジルコネート / 2層 / 液洛 / インジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は電荷担体の異なる2種の固体電解質を貼り合わせて2層としたバイブリッド型の固体電解質起電力特性を解明しつつ、その液洛における界面現象の詳細を明らかにする研究である。具体的には酸化物イオン伝導体である安定化ジルコニア表面上に厚さ数十ミクロンの高温型プロトン伝導体であるストロンチウムジルコネート系の固体電解質膜を生成するものである。研究は既に申請時に行った予備的な研究に加えて、2層状態の形状の異なる試料を用いて実験を行った。その結果、予備的な試験で行った起電力特性とはことなる結果特性が得られてより詳細な検討が必要となることが明らかとなった。また、予備的試験では長時間の高温実験でも見られなかった亀裂、特に厚さ数十ミクロンのプロトン伝導体側に散見されて、界面の液洛の構造に対して同様により詳細な検討が必要であることが明らかとなった。 一方、より広く材料を検討するために同じ系統の高温型プロトン伝導体であるカルシウムジルコネート系の固体電解質を用いた場合の検討を行う予備的な試験として、インジウムをドープした安定化ジルコニアの酸化物イオン伝導特性の研究も行った。その結果、高温において酸化性の雰囲気内では酸化物イオン伝導性固体電解質として十分に機能していることがわかったが、還元性、特に水素雰囲気ではドーパントとして用いているインジウムがガスとして逸失し、固体電解質が不安定になることがわかった。インジウムはカルシウムジルコネートにプロトン伝導を生じさせる最も重要なドーパントであり、この点で安定化ジルコニアのドーパントとしてどのような範囲で利用可能なのかの詳細を検討する必要があることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
安定化ジルコニア表面にストロンチウムジルコネート系の固体電解質を生成させる2層の固体電解質においては概ね計画通りの進展となっている。特にハイブリッドの固体電解質に生じる起電力においては界面の液洛の特性を考慮すると、当初より形状依存が予想された。令和5年度の試験においてはそれが証明された。しかしながら、特に薄膜側のストロンチウムジルコネート側に亀裂が生じているのは想定外の結果となった。このことから、試料形状においてはより慎重さが求められることが明らかになった。この点は今後の研究方針を決める上での重要な知見となった。 一方、より広くこのハイブリッドな固体電解質の特性について検討する目的で行ったインジウムをドープした安定化ジルコニアの酸化物イオン伝導体としての実験であったが、水素雰囲気にいて安定化ジルコニアが粉化し崩壊するという想定外のことが生じた。インジウムをドープしたカルシウムジルコネートは同系統の高温型プロトン伝導体では最も高温までプロトン伝導の輸率が高く、センサーなどへの応用を考えた場合は最も有用なハイブリッドな固体電解質に成ることが期待されていた。この点を生かすためにインジウムをドープした安定化ジルコニアの使用可能領域の詳細な検討が必要になり、その点で当初考えていたスケジュールに対してやや遅れ気味となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度から、当初の予定通り始めに異なる電荷担体を持つ固体電解質を貼り合わせた場合の界面現象の詳細を明らかにするために、電子顕微鏡等により界面の状態の観察や解析を行っていく。ただし、電荷担体としてプロトンと酸化物イオンはどちらも揮発性のイオンのため実験後のイオンの状態を観察することは難しい。そこで観察と同時にシミュレーションなどの活用により、界面までのイオンの移動や界面におけるイオンの挙動などについて検討を行っていく予定である。また、より多くの分野への利用を考慮してセンサーとしての最適化を目的に、形状の異なる試料や電極の取り付け方の工夫を行うことでより多くのデータを収集し、シミュレーションや観察を通して昨年度明らかになった亀裂の原因を探るなどをおこなっていゆく。 一方で、インジウムをドープした安定化ジルコニアは水素雰囲気においては試料として使えないことが明らかになった。このために、ハイブリッドの固体電解質の試料として使用が可能な条件、すなわち温度や雰囲気あるいはドーパントとしてのインジウムの濃度を明らかにする必要がある。令和6年度はこの点を中心に研究を進めていく予定である。さらにその結果から、ハイブリッドの固体電解質として利用が可能なのかの決定を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
既に研究実績の概要、進捗状況、今後の研究の推進方策で記述したように、インジウムをドープした安定化ジルコニアに対する追加研究をする必要が生じた。そのために試料作製費用や雰囲気ようのガス等の費用が必要となったため次年度に繰り越すことで令和6年度の交付金に充当し必要十分な実験をおこなえるように研究費の一部を繰り越すこととした。 具体的これらの費用は、試料原料の酸化インジウム、酸化ジルコニウムの購入費用、実験雰囲気を調整する水素、アルゴンなどのガスの購入費用、電極材料としての白金塗料等に充当する予定である。
|