2023 Fiscal Year Research-status Report
Real-space and dynamical imaging of molecular orbitals by means of field emission microscopy
Project/Area Number |
23K04516
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 正洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80282333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20435598)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 電界放出顕微鏡(FEM) / 分子軌道の実空間・動的イメージング / トンネル障壁制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査トンネル顕微鏡(STM)の発明によって分子軌道の実空間イメージングが可能になることで分子軌道の直感的な把握が可能になり、分子が関わる現象の理解が大きく深まった。但し、STMでは走査により画像化するため、実時間での動的変化の直接的計測には大きな困難を伴う。また最近の光電子運動量顕微鏡(MM)の発達により、分子軌道の簡易な実空間での把握が可能になったが、ここで得られるのは多数の分子の平均情報である。これに対し、申請者は電界放出顕微鏡(Field Emission Microscopy: FEM)により、個々の分子の軌道の実時間・実空間イメージングが可能であることを示してきた。本研究では、精密計測を通じて、FEMにおける実空間・動的分子軌道イメージングの基礎学理を完成させる。これをもとに、本手法を用いた分子軌道ダイナミクス(反応)の理解に向けた道筋をつけることが本研究の目指すところである。 本年度は、本研究においてFEMによる実空間・動的分子軌道イメージングを実現するために必要となる、高速度ビデオカメラの仕様を最終的に決定し、併せて、この高速度ビデオカメラの特性を効果的に活用するためのレンズ(光学系)を選定した。さらに、現有のFEM装置内に、計測対象の分子及びトンネル障壁となる被覆膜を、ロードロック機構により、超高真空下でFEM tip先端に堆積させる機構を備えるとともに、十分な安定性を確保しつつ、高速ビデオカメラとレンズ(光学系)を適切に配置するための、強力永久磁石を有する大型平形マグネット雲台、及び、高さ可変式のホルダ台を選定し設置した。 最終的に、以上準備した、高速度ビデオカメラを含む機器が、FEMを用いた分子軌道の実空間・動的オメージング法として適切に機能し、十分な性能を有することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、予定した計測を実現するためには、現有のFEM装置に、本研究の目的に適合した高速度ビデオカメラ及びレンズ(光学系)を適切な位置に、十分な安定性を確保した上で、設置することが重要である。試行錯誤の上、強力な永久磁石を有する大型平形マグネット雲台及びホルダ台を用いることで、求められる堅牢性、再現性を確保できることが明らかになった。これによって、予定した、実空間・動的イメージング計測の実現が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、当研究を推進する上で障害となる問題は現れていない。これまでの検討の中で、十分な経験を蓄積しているタングステンtipを用い、実験条件を更に追求することで、適切なバリア層を形成し、これを活用した動的計測を開始する予定である。 計測の対象として、令和6年度は、超原子分子軌道を含めて、分子軌道の形状が、理論的、実験的の両者の視点から十分に理解が進んでいるC60分子から研究を開始する。ここでは、まず、電子状態の実時間、実空間での動的変化の計測の有効性を実験データをもとに示す予定である。その後、対象の分子の形状を、多様に変化させた中で現れる、特徴的な現象を計測するとともに、さらに、同種、異種の複数の分子間により協調的に現れる、反応に関わる軌道形状の変化の動的計測の可能性を追求する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、現有のFEM装置と高速度ビデオカメラ+レンズ(光学系)の融合に想定以上の時間がかかったため、本格的な実時間・動的計測を開始する段階には至らなかった。現時点では、これまでに保有していた分子を試験的に用いた段階に留まり、学術的に意味のある分子を用いた計測には取りかかることができなかった。
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