2023 Fiscal Year Research-status Report
電子波動関数の時間発展データを用いたナノスケール半導体中の物性予測モデルの構築
Project/Area Number |
23K04527
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
村口 正和 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (90386623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須子 統太 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (40409660)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 量子ダイナミクス / 機械学習 / ナノスケール半導体 / デバイス物理 / 時間発展計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
◆ 本研究では、デバイス中のキャリアダイナミクスシミュレーションを対象とし、物理シミュレーションの最大の利点である、「内部状態や中間過程を解釈できる」点を損なわず、むしろ高めるような機械学習の応用手法を明らかにすることを目指している。具体的には、ナノスケール半導体中の電子ダイナミクス計算への機械学習の適用について、物性から系の条件を見出す逆問題に着目して検討を進めた。電子波動関数の時間発展を両者の関係を媒介する情報を持つものと位置づけ、モデル化を通して、中間状態の解釈性の高いナノスケールの物理を取り込んだ機械学習モデル構築手法を明らかにすることを目指している。
◆ 2023年度は、まずデバイス中のキャリアダイナミクスと不純物分布の関係の解析に適した手法の検討を行った。アプローチとしては、ナノスケール半導体中のキャリアダイナミクスシミュレーションを行い、実時間実空間での電子密度分布の時系列データを切り出した。得られたデータを用いて、不純物の空間分布と電流密度などとの間に成り立つ傾向を学習・予測した。不純物の数、種類、系のサイズ等による影響を含めた様々な条件下でのデータを蓄積し、機械学習モデル作成に適した、物理に基づく特徴量抽出に取り組んだ。さらに、得られた特徴量をもとにモデルを構築し、それを用いて得られた波動関数と物性の関係を調べることで、精度と特徴量の重要度や解釈性について検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度に計画していたナノスケール半導体中の電子ダイナミクス計算への機械学習の適用について、物性から系の条件を見出す逆問題に着目して検討し、順調に学習用データが得られている。また、それを用いた電子波動関数の時間発展過程のモデル化も順調に推移しているため、おおむね順調に推移していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前年度に構築したモデル作成の手法を改良しつつ、シミュレーションによる演繹的計算と、機械学習による帰納的計算を組み合わせて、ナノスケールデバイス中の不純物の空間分布からデバイス特性や電流経路から設計する手法などの指針を与えることに注力していく。これらを通して、基礎的なナノスケール半導体デバイス中でのキャリアダイナミクス計算に対する、解釈性を高めた機械学習の適用方法を確立することを目指す。今後の量子デバイス設計に不可欠な、量子ダイナミクスのデバイス設計応用に適した機械学習とはどのようなものであるかという問いへの解答の足掛かりを得たい。なお、得られた成果は、計画に基づき、国際会議、学術論文としてまとめ発信していく。
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Causes of Carryover |
大型計算機使用料で見込んでいた費用について、想定以上にデータを取ることが出来たため余剰が生じた。次年度以降はさらに大規模なデータが必要となるため、余剰分を次年度の計算機使用時間拡充にあてる予定である。
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