2023 Fiscal Year Research-status Report
磁性ナノ粒子の誘導加熱の精密予測を可能にする理論の確立と新規粒子合成法の開発
Project/Area Number |
23K04539
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
岩崎 智宏 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50295721)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 磁性ナノ粒子 / 誘導加熱 / 磁気ハイパーサーミア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、磁気ハイパーサーミアの実現に向けた新しい誘導加熱理論の構築と最適な磁性ナノ粒子群の合成を目的として、化学工学や微粒子工学に加え、複数の分野の知見を包括した、従来とは全く異なるアプローチを採用することで、最高の性能を発揮する目標を提示可能な理論と、目標を達成するための合成法の実現を目指している。前者を実現するために、これまで関連性が注目されなかった複数の分野における知見を理論的に結び付けて融合し、それぞれの影響を厳密に加味した理論を新たに構築する。また、後者の実現のために、メカノケミカル処理を伴う全く新しい合成プロセスの開発とメカニズム解析を行う。以上を踏まえ、令和5年度では、磁性ナノ粒子の誘導加熱特性に著しく大きな影響を与える結晶子径を精密にコントロールできるナノ粒子合成プロセスの構築について検討した。これまでに、遊星ボールミルを用いた、尿素加水分解を利用した酸化鉄ナノ粒子のメカノケミカルアシスト合成プロセスを構築しており、これをベースとして、出発原料および媒体ボール材質、反応条件等を種々変更し、得られた生成物を詳細に分析した。その結果、条件により各種酸化鉄・水酸化鉄の生成経路および生成メカニズムが変化することが明らかになり、条件を最適化することで結晶子径が調整されたマグネタイトナノ粒子群の安定合成に成功した。これにより誘導加熱の制御および最適化の実現が期待でき、令和6年度以降に実施予定の生成物特性の詳細解析と誘導加熱の理論構築につながりうる重要な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づいて種々の実験を行い、取得したデータを丁寧に解析した結果、磁性材料であるマグネタイトのナノ粒子を安定して合成できる新規プロセスが構築でき、次年度以降に実施する誘導加熱メカニズムの解析や理論構築に関する検討につながる成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、従来の理論を修正するためのアイデアを異分野から取り入れて検討すると同時に、並行して異なる物性の磁性ナノ粒子をさまざまな手法を駆使して合成し、その誘導加熱特性と各種物性との関連性を詳細に検討する。また、メカノケミカルアシスト合成法で得られたナノ粒子は凝集することが多いため、凝集状態をモデル化して誘導加熱理論に組み込むとともに、メカノケミカル処理に伴う結晶構造および磁気特性の変化についても着目し、正確な誘導加熱予測が可能な理論の構築を目指す。
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