2023 Fiscal Year Research-status Report
Micro-spectroscopic investigation of excition dynamics on multi-component molecular nanocrystals exhibiting photon-upconversion properites
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23K04541
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
宇和田 貴之 城西大学, 理学部, 准教授 (30455448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 雅司 城西大学, 理学部, 教授 (10635428)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フォトンアップコンバージョン / 三重項-三重項消滅 / 分子結晶 / ナノ粒子 / 顕微分光 / イメージング / 凝集誘起発光 / ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
増感剤・発光剤分子間の光励起エネルギー移動に基づく三重項-三重項消滅フォトンアップコンバージョン(TTA-UC)は、太陽光程度の低強度光においても高エネルギー光への変換を実現する。TTA-UCは幅広い応用が期待されており、そのためには固体中における高効率化が急務となる。我々は増感剤と発光剤からなる二成分分子結晶ナノ粒子を基礎とし、そこに更に嵩高い第三の分子を導入することで空気中でも高TTA-UC効率を示すナノ粒子の調製に成功した。この第三の分子によりナノ粒子内では増感剤・発光剤が密集していながらも会合が抑えられ、発光剤間のエネルギー移動、即ち励起子拡散が起きやすくなったと考えられる。本研究ではこのUCナノ粒子について顕微分光イメージングにより単一粒子レベルでTTA-UC励起ダイナミクスを観測することを目的としている。 初年度の本年は、独自のUCナノ粒子励起ダイナミクス観測の端緒として発光寿命測定を行った。ドナー・アクセプターの溶液系の寿命と比べてナノ粒子コロイドのそれは約1/10と極めて短寿命であった。これは溶液系の寿命が分子拡散に依存するのに対し、ナノ粒子の場合はナノ空間に閉じ込められた励起子拡散によるものと結論した。今後のUC効率の向上に資する情報と考えている。 並行してUCナノ粒子の更なる高効率化を目指し、凝集誘起発光分子・テトラフェニルエチレン(TPE)をアクセプターとしたUCナノ粒子を検討した。凝集誘起発光分子はモノマーでは分子内回転運動によりほとんど発光を示さないが凝集し回転運動が抑制されると強い発光を示す。このため分子結晶ナノ粒子においてはアクセプターの凝集による発光効率減少を抑えられると期待した。こちらにおいても単一粒子レベルでのUC発光を確認できたが、やはりドナー・アクセプターだけでなく嵩高い第三の分子を導入する必要があることも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的は、我々独自の嵩高い第三の分子(凝集抑制剤)を加えたUCナノ粒子のTTA-UCダイナミクスを、単一分子分光イメージングの方法論に基づき単一粒子レベルでの観測を実現することにある。そのための段階として①CW532 nmレーザー光を広域照明しUCナノ粒子のUC発光と増感剤の発光の2色の発光を同時に分光イメージング可能な顕微分光装置の構築、②予備情報としてのバルク(この場合はナノ粒子コロイド)での発光寿命測定を既に終えており、更にUCの高効率化を目指した③独自のUCナノ粒子の発展である凝集誘起発光分子をアクセプターとした粒子の開発にも着手している。初年度に達成すべき目標はクリアしており、研究全体として目的に向けて着実に進展している。予備的な研究結果と②を併せて一刻も早い論文化を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は我々独自のTTA-UCを引き起こすドナー・アクセプター分子に更に嵩高い第三の分子(凝集抑制剤)を加えた三成分ナノ粒子の単一粒子レベルでのTTA-UCダイナミクス観測を実現するべく、デュアルカラー発光顕微分光イメージング装置での測定に挑む。 光学顕微鏡下でCW532 nmレーザー光を対物レンズを使用し試料へ広域照明する。試料はナノ粒子をガラス基板にスピンコートしたものを用いる。ナノ粒子一粒ごとから生じるUC発光と増感剤の発光を分光測定しその強度比や励起光強度依存性を調べることでUCの発現およびUC効率を明らかにする。また分光測定と併せて高速CMOSカメラにより発光強度のゆらぎを単一粒子レベルで調べることで、単一蛍光分子の明滅現象計測の方法論を援用しTTA-UCダイナミクスの理解に挑む。また単一粒子レベルの発光寿命測定にも挑戦する。こちらは装置に組み込まれたレーザーの強度が足りるかどうかが現在不明であり、もし不足していることが判明すれば共同研究者を探して対応する。 並行して、そしてTTA-UCダイナミクス解明のフィードバックとして、分担者である橋本雅司教授(城西大学)の協力のもと、UCナノ粒子のドナー、アクセプター、凝集阻止剤の組み合わせと構造を再検討し、より高いUC効率を示すナノ粒子の開発にも挑戦する。
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Causes of Carryover |
参加を予定してた国際学会への出席を取りやめたため、旅費の支出が大きく減少し次年度への繰越となってしまった。その間に研究結果も充実したため、本年度はこの繰越分を論文投稿費として使用する計画でいる。
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