2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of thermophoretic tweezers for trapping single molecules
Project/Area Number |
23K04561
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
瀬戸浦 健仁 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90804089)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 局在表面プラズモン共鳴 / 光熱変換 / サーモプラズモニクス / 高次モードプラズモン / 窒化チタン / 窒化ジルコニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3カ年で実施しており、初年度が終了している。本研究では、分子サイズの一桁ナノメートルの物質を、温度の空間勾配に誘起される熱泳動という物質輸送現象によってピンセットで摘むように捕捉する技術を開発している。 強い熱泳動を誘起する鍵となるのが、加熱の空間スケールを微小化することである。熱泳動現象は温度の空間勾配[K/m]に比例して強く起こるため、従来は近赤外波長のレーザー光を高倍率の対物レンズで直径1マイクロメートル程度のスポットに集光照射して水などの溶媒を加熱し、そのスポットサイズの逆数程度の10の6乗[K/m]のオーダーの温度勾配によって熱泳動を誘起する手法がよく用いられてきた。 これに対して本研究では、局在表面プラズモン共鳴を示す金属ナノ構造に光を照射してナノメートル領域を加熱することで、加熱の空間スケールを微小化してさらに効果的に熱泳動を駆動することを考えた。局在表面プラズモンは金属中の自由電子の集団振動であり、光照射によってこれを励起して高効率にナノ構造を加熱できるという利点がある。 初年度では、熱泳動を自在に制御することを目的として、電磁場および温度場の数値シミュレーションによって「照射する光の波長と偏光によってナノメートル領域の温度分布を劇的にスイッチングできるナノロッド構造」を見出し、原著論文として出版した。通常の金属を光照射で加熱しても、温度の空間分布は照射する光の強度分布によって支配的に決定されてしまうが、本研究では、局在表面プラズモンの振動モードがナノ構造の表面温度分布にダイレクトに転写される条件を見出した。これによって、棒状(ロッド状)のナノ構造に照射する平面波のレーザー光の波長および偏光を変更するだけで、ナノメートル領域の温度分布を自在に変調可能となるため、熱泳動の制御性が飛躍的に向上することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では、ナノメートル領域で熱泳動を駆動するために、三角形の金属ナノ構造の多量体(二量体や三量体など)を用いる予定であった。これは現状の微細加工技術では、電子線リソグラフィー等の装置を用いても容易ではないため、ナノ構造の作製には困難が予想されていた。 しかし概要でも一部を述べたが、これまで局在表面プラズモンの研究で広く用いられてきた金または銀などの貴金属に代わって、窒化チタンやマンガンなどの低熱伝導率のプラズモニック材料を用いることで、ナノロッドの単量体等の比較的作製が容易な構造でも、ナノメートル領域の温度分布を光照射によって自在に制御できることを見出した。初年度の目標は「熱泳動を駆動および制御するためのナノ構造のデザイン」であったため、進捗は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、数値シミュレーションで設計したナノロッド等のナノ構造を、外部機関の電子線リソグラフィーなどの微細加工装置によって作製し、熱泳動の実証実験を行う。 まずナノロッド等の構造作製のために、光熱変換の空間制御に適したプラズモニック材料である窒化チタンの薄膜を誘電体基板上に成膜し、微細加工技術で所望の構造に加工する。基板上にはナノ構造を周期的に多数配置し、また基板自体も複数作製することで、熱泳動の実証実験を十分な回数行えるようにする。 ナノ構造基板が完成したら、自作の光学系でレーザー光をナノ構造に照射して、熱泳動が効果的に駆動できるか、そして光の波長および偏光によって熱泳動の挙動を制御できるかを検証する。そして最終年度に向けて、蛍光分子をドープしたポリスチレンナノビーズや量子ドットの熱泳動マニピュレーションを順次トライしていく。
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