2023 Fiscal Year Research-status Report
次世代超高記録密度磁気ディスク用単分子保護膜および潤滑膜の界面化学構造と材料設計
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23K04591
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柳沢 雅広 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, その他(招聘研究員) (20421224)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | トライボロジー / 表面増強ラマン分光法 / プラズモンセンサ / 磁気ディスク / 熱アシスト磁気記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代磁気記録方式として期待されている熱アシスト磁気記録用として設計した5種類のパーフロロポリエーテル潤滑剤を、ラマン分光法およびプラズモンセンサによる表面増強ラマン分光法を用いてその耐熱性を測定した。分子構造の変化をレーザーパワースキャンによるレーザー加熱により調べたところ、-C3F6-O-のDEMNUMタイプの主鎖の方が-CF2-O-のFOMBLINタイプの主鎖よりも耐熱性に優れていることを明らかにした。またフェニル基により耐熱性が向上し、その数が多いほど耐熱性に優れていることを明らかにした。また熱劣化のメカニズムとして分子量の減少および末端官能基のOH基が酸化してCOOH基になることを明らかにした。さらに熱分解は、FeやCoおよびそれらの水酸化物や酸化物が触媒作用として分解温度を下げることを明らかにした。これらの化合物は、CoPtやFePtなどの磁気記録膜が水分によりイオン化し保護膜を通して拡散して表面に形成される。単層グラフェン膜は通常の非晶質DLC膜よりもイオン拡散のシールド効果に優れ、潤滑剤の分解を防止することがわかった。さらに潤滑剤は炭化反応によりカーボンが生成し、Co酸化物やFe酸化物の粒子が混ざるとレオロジー効果により粘度が上昇することがあきらかになり、スミアとよばれる分解物を生成し、ヘッドクラッシュの原因となることが考えられる。さらに記録媒体を構成する薄膜の熱伝導を調べるための治具を試作した。潤滑剤のラマンスペクトルは、分子軌道法により計算し測定したスペクトルの振動モードの同定を行った。また分解が進んだスペクトルはバックグラウンドが大きく解析が困難になるため、2階微分法を適用して解析を行うことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱アシスト磁気記録用潤滑剤の耐熱性を、表面増強ラマン分光法により評価できることを明らかにした。また主鎖構造と官能基の材料設計指針を明らかにした。さらに磁性金属膜からの水酸化物や酸化物がその触媒作用により、潤滑膜の熱分解をより低温で促進することをあきらかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は滑材料に加えて保護膜材料にも注目し、その材料設計指針をあきらかにする。また潤滑剤と保護膜の分子間相互作用の観点から、表面増強ラマンスペクトルによって測定する。また潤滑膜、保護膜、磁性膜、および下地層の熱伝導を測定し、熱アシスト磁気記録の材料の設計指針を示す。
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