2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of pKa estimation scheme for polar amino acids considering protein conformational fluctuation
Project/Area Number |
23K04674
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松井 亨 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70716076)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 酸解離定数 / タンパク質 / 構造揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
分子動力学計算で構造を揺らがせた上で, 構造の部分最適化を実施した結果を用いて, 各々の構造から得られる物性値の平均を利用して, タンパク質内にあるアミノ酸(特にアスパラギン酸やグルタミン酸のCOOH基)の酸解離定数を求める方針を立てた. 当初はGAMESSに実装されている密度汎関数強束縛 (DFTB)理論による最適化を実行した. 酸解離定数の算出のためにベンチマークとなる分子(カルボン酸に水100分子を加えた系)を用いる必要があるが, DFTBの精度のためか通常の脱プロトンエネルギーのみでは十分な相関係数は得られなかった. そのため, プロトンソースとなるカルボキシルO原子とプロトンの距離の平均値も要素に取り入れることによって, 見積もった平均値と実験値の間に相関を得ることができた. 一方で, 通常のベンチマークとなる分子においても, これらの結果の分散が5.0 pKa unit程度と算出された. これまでの量子化学計算で実行した結果との比較も一つの課題となることが分かった. その一方で, より分子をモデル化して対象となるカルボン酸のみを考慮し, RI-MP2法によって脱プロトンエネルギーを求めたところ, エネルギーのみでも十分に相関が取れて, FMOとを組み合わせた結果からヒト膵臓リボヌクレアーゼ Aの持つAsp14 (アスパラギン酸)の酸解離定数を1.7(実験値 2.0)と求められた. ただ, これらはタンパク質の外側を向いたカルボン酸であり, 水素結合が重要な役割を果たす内部のアミノ酸ではないことから, 現在使っているモデルでは十分な説明はできないものと考えられる. 引き続き, これらを解決する方法を模索する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タンパク質の構造最適化を行うには, フラグメント分子軌道(FMO)法とDFTBとを組み合わせた手法でなければ, 十分な効率は得られない. そのため, 現在はこの組み合わせで十分な結果が得られるかを検証する必要があって, それ以外のプロトンソースからの酸解離定数を算出するに至っていない. 加えて, 通常の量子化学計算で実行したものと比較して酸解離定数の分散が非常に大きく, これまでの結果と生合成が取れていないので検討の余地が残っている. したがって, 1年目に予定していた低障壁水素結合(LBHB)系における酸解離までに到達できていないと判断して「やや遅れている」を選択した.
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Strategy for Future Research Activity |
現状では, COOH基のみの酸解離定数算出となっており, アミノ基, フェノール基, イミダゾール基に対応できていない. 他の官能基についても同様の計算を行なって算出方法が適切かを検討する必要がある.それを用いて, FMO+DFTBによる計算の妥当性を検討した上で, タンパク質内のアミノ酸の酸解離定数を導出する方法を確立したい.
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