2023 Fiscal Year Research-status Report
高感度・超高速赤外円偏光二色性分光による光学活性な光応答性分子の絶対配置の追跡
Project/Area Number |
23K04681
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
坂本 章 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90262146)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 赤外円偏光二色性分光 / 不安定分子種 / 準安定状態 / 時間分解赤外分光 / 短寿命過渡分子種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,不安定分子種を対象にした冷却・定常光照射下での高感度な赤外円偏光二色性(VCD)分光システムと短寿命過渡分子種を対象にした超高速VCD分光システムを開発し,それらの分光システムを用いて,キラルな高速フォトクロミック分子や光駆動キラルオレフィンのVCDスペクトルの測定と解析を行い,キラルな構造変化ダイナミクスを解明することを目的とする.令和5年度には,主に,以下の2つの研究を行った. (1) 光応答性金属錯体の準安定状態の同定:温度変化や光照射によって分極やスピン,プロトン移動などを複合的に制御できる光応答性金属錯体の赤外吸収スペクトルを,極低温(約7 K)まで温度を変えながら測定し,準安定状態を同定し,その分子構造変化について解析した. (2) 不安定分子種の振動円偏光二色性分光に向けた低温測定システムの開発:新たな固体試料の赤外吸収測定法として砂目を付けたCaF2窓板に直接試料を挟む方法(砂目CaF2窓板法)に着目し,光学活性なアミノ酸を試料としてKBr錠剤法との比較を行った.多くの固体アミノ酸において,そのVCD信号はいずれも再現性の高いスペクトル形状を示し,L体とD体でミラーイメージを示した.また,キラル機能性分子・錯体への応用を念頭に,砂目CaF2窓板法を用いた低温でのVCD測定システムの製作を行った.液体窒素冷却クライオスタットを用いて,バイノールを例に,77.4 KでのVCDスペクトルの測定を行ったところ,低温VCD測定は可能ではあったものの,クライオスタットに由来すると考えられる背景信号がスペクトルに影響を与えることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「5. 研究実績の概要」に記述したように,令和5年度には,本研究の目的と関連する2つの研究を実施した.本研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度以降には,以下の研究を実施する予定である. (1) 砂目CaF2窓板法の低温VCD測定への汎用性および適用性の検証 (2) 冷却・定常光照射下での高感度なVCD分光システムの開発 (3) 光および温度変化によって電子移動が誘起されるキラル配位子を有する機能性金属錯体の準安定状態(不安定分子種)のVCD測定と解析
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Causes of Carryover |
理由:超高速VCD分光システムの開発に必要不可欠な赤外アレイ検出器のボックスカー積分器(128チャンネル)に不具合が生じ,米国に返送するなどその修理に非常に時間がかかり,その開発が十分に行えなかった.そこで,研究費を次年度に繰越して,当初の研究目的を達成することを計画した. 使用計画:すでに上記の問題は解決しているため,令和6年度以降には超高速VCD分光システムの開発も遂行する予定である.
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