2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of ultrasensitive methods for acquiring differential spectra using quantum light
Project/Area Number |
23K04684
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松崎 維信 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70830165)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 量子もつれ光 / サブ・ショット・ノイズ吸収分光法 / 円二色性分光法 / 過渡吸収分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年度は、量子もつれ光を光源とした新しい超高感度円二色性分光法の開発を行なった。光源である量子もつれ光は、深紫外連続光レーザーを非線形結晶であるΒΒΟに照射することで、自発パラメトリック下方変換により発生させた。得られたもつれた光子対を光子1つずつに分割し、片方を試料測定、もう片方を参照測定に用いることで、ショット・ノイズ限界を超える感度で吸収分光測定を行うことができるのは既報の通りである。本研究では更に、1/4波長板を用いることで試料測定に用いる光子の偏光を左円偏光あるいは右円偏光とし、各々の偏光を用いた2種類の吸収スペクトルの取得を実現した。得られた2種類の吸収スペクトルの差スペクトルを評価することで、最終的に円二色性スペクトルを取得した。 開発した手法の実証実験を行うにあたり、試料としてはトリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯イオンを用いた。これは典型的なキラル化学種であり、配位子である3つのビピリジンがどのようにルテニウムイオンに配位するかにより、Λ体とΔ体という2種類の鏡像異性体が存在する。各々の異性体に対して開発した手法を用いて円二色性分光測定を行ったところ、Λ体では正、Δ体では負の符号を持つ信号が可視光領域において観測され、本手法により円二色性スペクトルが正しく取得できることが確認された。更に、得られたスペクトルに含まれるノイズはショット・ノイズ限界を30%も下回っており、量子もつれ光を光源とすることにより従来法の限界を超えた感度で円二色性測定が可能であることが実証された。この高感度化の結果、同様の測定条件のもとでは、本研究で開発した手法を用いることにより従来法と比べて2倍高速に円二色性分光測定が行えることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、量子もつれ光を光源とする新しい超高感度円二色性分光法の開発であった。研究実績の概要に記載した通り、これは計画通りに達成することができたので、研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、量子もつれ光を光源とすることで、超高感度円二色性分光法および超高感度過渡吸収分光法という2つの新しい分光手法を実現することを目標としている。1つ目の研究テーマである超高感度円二色性分光法の開発については既に目標を達成することができたので、今後は研究の総括を行う。それと同時に、2つ目の研究テーマである超高感度過渡吸収分光法の開発にこれから着手する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度中に光検出器として用いるCMOSカメラ(2,899,875円)を発注したが、年度内に納品されなかったため次年度使用額が生じた。CMOSカメラが納品され次第、この次年度使用額はCMOSカメラの購入費用として使用される予定である。
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